「猟友会おかしい」は本当か?2026年最高裁判決とクマ駆除拒否・報酬格差の実態を徹底解説
「猟友会おかしい」と検索する人が増えている背景には、クマの駆除要請に対する出動拒否、自治体によって異なる報酬、行政とハンターの責任分担をめぐる深刻な問題がある。とりわけ北海道では、砂川市のヒグマ駆除をめぐる池上治男さんの裁判が2026年3月27日に最高裁で決着し、北海道公安委員会による猟銃所持許可の取消処分が違法と判断された。さらに、積丹町での出動停止問題や、緊急銃猟制度の運用など、猟友会を取り巻く環境も大きく変わっている。
ただし、猟友会は全国一律の公的機関ではなく、地域ごとに組織された狩猟者の団体だ。出動を断ることがすべて不当なのか、報酬を求めることが身勝手なのか、行政側にどのような責任があるのかは、個別の事情を分けて考える必要がある。2026年11月時点の判決、制度改正、報道された現場トラブル、統計資料をもとに、批判される理由と実際の活動を整理する。
📌 この記事の重要ポイントまとめ
- 最高裁判決: 2026年3月27日、砂川市のヒグマ駆除を担当した池上治男さんの猟銃所持許可取消処分について、最高裁が違法と判断した。
- 出動拒否: 積丹町では町議とハンターのトラブルから活動が一時停止したが、謝罪と新たな対応マニュアルの策定を経て再開した。
- 報酬格差: クマ駆除の報酬は自治体ごとに異なり、時給・日当・捕獲報奨金など複数の方式が存在する。
- 制度改正: 2025年9月に緊急銃猟制度が始まり、2026年4月には環境省のガイドラインも改訂された。
- 本質的な問題: 猟友会だけに責任を求めるのではなく、行政の安全管理、補償、報酬、担い手確保を一体的に考える必要がある。
【理由を徹底検証】「猟友会おかしい」と言われる背景には何がある?
猟友会に対する批判は、主に4つの論点に分けられる。
1. クマの駆除要請を断ることがある
最も批判を集めやすいのが、自治体からの出動要請に応じないケースだ。
住宅地にクマが出没し、住民が不安を感じている状況で、ハンターが出動しないとなれば「地域住民の安全より自分たちの都合を優先しているのではないか」という疑問が生まれる。
しかし、出動拒否には理由がある。
- 現場の安全確保が不十分である。
- 事故が発生した場合の責任や補償が不明確である。
- 報酬が危険性や拘束時間に見合っていない。
- 行政や住民との信頼関係が損なわれている。
- ハンター自身が発砲の危険性を判断し、対応を見送る必要がある。
特に問題なのは、行政から駆除を依頼されても、実際の危険や法的責任がハンター個人に集中しかねない構造だ。
北海道猟友会は2025年8月、自治体から発砲を要請された場合でも、状況に応じてハンター自身の判断で射撃を拒否することを容認する方針を示した。背景には、人身事故が起きた場合の補償が不十分だという懸念があった。
つまり、出動拒否は必ずしも住民を軽視した行為ではない。安全と責任の条件が整っていない現場への対応を見送るという側面もある。
2. 報酬を求めることへの反発
2つ目は、クマ駆除の報酬をめぐる問題だ。
猟友会のハンターが自治体に報酬の増額を求めると、ネット上では「地域のために活動するなら無償でやるべきではないか」という意見も出る。
しかし、実際の駆除活動にはさまざまな負担が伴う。
- 現場への移動に必要な燃料費
- 猟銃や装備の維持費
- 捕獲や警戒に費やす時間
- 事故や負傷のリスク
- 本業を休むことによる収入減少
- 捕獲後の処理や報告などの作業
猟友会の会員は全員が専業ハンターではない。別の仕事を持ちながら地域の鳥獣対策に協力する人も多い。
大日本猟友会も、有害鳥獣捕獲について、厳しい自然条件や危険性のある活動を狩猟者の半ばボランティア的な協力の下で実施している実態を説明している。
報酬を求めること自体がおかしいのではなく、仕事の危険性や必要経費に見合う条件が整っているかが問題だ。
3. 行政との責任分担が曖昧
3つ目は、自治体と猟友会の役割分担だ。
住民からすれば、クマが出没した際に行政がハンターへ依頼するのは当然に見える。しかし、行政が出動を要請することと、現場の安全を確保することは別の問題である。
現場に一般住民が残っている、周囲の状況が整理されていない、事故が起きた際の補償が不明確といった状況では、ハンターは危険を引き受けることになる。
こうした構造が、出動をめぐる不信感につながっている。
4. 地域によって対応に差がある
猟友会には全国的な組織が存在するものの、実際の活動は地域の支部や自治体との関係に大きく左右される。
そのため、ある自治体では迅速に駆除活動が行われる一方、別の自治体では報酬や安全管理をめぐる協議がまとまらず、出動が停止することもある。
この違いをすべて猟友会の組織体質に結び付けるのは適切ではない。自治体の財政力、地域のハンター数、クマの出没状況なども関係している。
【組織の実態】猟友会の活動内容と仕組み、評判はどうなっている?
猟友会は行政機関ではなく狩猟者の団体
猟友会は、狩猟免許を持つ人などを会員とする組織であり、国や自治体の行政機関そのものではない。
一般社団法人大日本猟友会の公式組織説明によると、全国の都道府県に猟友会が設置され、その下に市町村単位などの支部・地区猟友会が置かれている。
地域の支部に加入すると、都道府県猟友会、さらに大日本猟友会の構成員となる仕組みだ。
会員区分は主に次の4種類に分かれている。
| 会員区分 | 主な狩猟方法 |
|---|---|
| 第一種銃猟 | 装薬銃を使用する狩猟 |
| 第二種銃猟 | 空気銃などを使用する狩猟 |
| 網猟 | 網を使った捕獲 |
| わな猟 | わなを使った捕獲 |
猟友会の主な活動内容
猟友会の活動は、趣味としての狩猟だけではない。
主な活動は次のとおり。
- 狩猟活動と鳥獣の適正管理
- クマ、シカ、イノシシなどの有害鳥獣捕獲
- 農作物や生活環境への被害対策
- わなによる捕獲活動への協力
- 狩猟事故防止のための指導や啓発
- 自治体からの依頼による警戒・調査活動
- 狩猟技術や安全管理に関する知識の共有
特に重要なのが、有害鳥獣捕獲だ。
一般的な狩猟は、法律や期間、区域などの条件に従って行われる。一方、有害鳥獣捕獲は農林水産業や生活環境への被害を防止するため、自治体などの許可・依頼に基づいて実施される。
この2つは目的も制度も異なる。
猟友会の評判が分かれる理由
猟友会への評価は、立場によって異なる。
| 評価する立場 | 主な評価・不満 |
|---|---|
| 地域住民 | クマの出没時に迅速な対応を期待している |
| 農業関係者 | 農作物被害を防ぐ活動への期待が大きい |
| ハンター | 安全確保、報酬、事故時の補償を重視する |
| 自治体 | 有害鳥獣対策の重要な協力者だが、担い手不足に悩む |
| 一般社会 | 地域貢献を評価する一方、出動拒否には疑問を持つ人もいる |
ここで見落とされがちなのは、猟友会が存在するからといって、自治体が必要とするすべての駆除業務を無条件に引き受ける義務が生じるわけではないという点だ。
行政サービスの一部を担う重要な協力団体ではあるが、行政組織と同じ権限や指揮命令関係を持っているわけではない。
【砂川市ヒグマ駆除事件】池上治男さんの最高裁逆転勝訴で何が変わった?
2026年の猟友会をめぐる議論で、特に重要な出来事が砂川市の池上治男さんの裁判だ。
この事件は、行政の要請を受けてクマを駆除したハンターが、その後、猟銃所持許可を取り消されたというものだった。
2018年の駆除から行政処分まで
2018年8月、北海道砂川市からヒグマ駆除の要請を受けた北海道猟友会砂川支部長の池上治男さんが、ライフル銃を1発発砲してヒグマ1頭を駆除した。
しかし、発砲した方向には弾丸が到達する可能性のある建物があったとして、北海道公安委員会は2019年4月、池上さんの猟銃所持許可を取り消した。
池上さんは処分の取り消しを求めて提訴した。
2021年から2026年までの裁判の経緯
この裁判では、自治体からの駆除要請を受けた公益的な活動であったことと、銃の発砲に伴う安全上の責任をどのように評価するかが争点になった。
| 時期 | 出来事 | 結果・意味 |
|---|---|---|
| 2018年8月 | 砂川市の要請で池上さんがヒグマを駆除 | ライフル銃を1発発砲 |
| 2019年4月 | 北海道公安委員会が猟銃所持許可を取消し | 行政処分を受ける |
| 2021年 | 札幌地裁で一審判決 | 池上さん側が勝訴 |
| 2024年10月18日 | 札幌高裁で二審判決 | 一審を覆し、池上さん側が敗訴 |
| 2026年3月27日 | 最高裁第三小法廷が判決 | 北海道側の処分を違法と判断 |
| 2026年4月9日 | 北海道公安委員会が謝罪 | 猟銃1丁を返還 |
| 2026年8月17日 | 池上さんが新たに提訴 | 猟銃廃棄をめぐり国と北海道に賠償請求 |
2026年3月27日、最高裁が示した判断
最高裁第三小法廷は、北海道公安委員会による猟銃所持許可の取消処分について、裁量権の範囲を逸脱した違法な処分と判断した。
これによって札幌高裁の判決は破棄され、池上さん側の勝訴が確定した。
判決で重要なのは、単にハンターの活動を優遇したわけではないという点だ。
最高裁は、自治体の要請を受けて住民の安全を守るために行われた公益的な活動であったことや、許可取消処分が今後の有害鳥獣捕獲活動を萎縮させる可能性を重視した。
つまり、行政処分の重さと、現場の状況、活動の公益性を総合的に評価する必要があると示したのである。
ただし、この判決は危険な発砲を全面的に認めたものではない。猟銃の安全管理や法令遵守が不要になったわけでもない。争点となったのは、池上さんに対する許可取消処分が妥当だったかどうかだ。
2026年4月、北海道公安委員会が謝罪
最高裁判決を受け、北海道公安委員会は2026年4月9日、池上さんに謝罪し、猟銃1丁を返還した。
池上さんは約7年ぶりに猟銃を取り戻すことになった。
しかし、ここで新たな問題が浮上する。
押収されていた猟銃2丁のうち、もう1丁はすでに札幌地検によって廃棄されていたのだ。
札幌地検側は、池上さんの署名入り所有権放棄書に基づく適正な手続きだったとの立場を示している。一方、池上さん側は自らの意思に反して書類が作成されたと主張した。
2026年8月、池上さんが再び提訴
2026年8月17日、池上さんは廃棄された猟銃をめぐり、国と北海道を相手取って札幌地裁に国家賠償を求める訴訟を起こした。
請求額は約43万円と報じられている。
この新たな裁判では、猟銃の所有権放棄書がどのように作成されたのか、関係機関による銃の保管や廃棄の手続きが適切だったのかが問題になっている。
最高裁で行政処分の違法性が認められた後も、池上さんをめぐる問題は完全には終わっていない。
この一連の経緯は、ハンターが行政の依頼に応じる際、活動後の法的な保護や財産の管理まで含めて制度を整える必要があることを浮き彫りにした。
【積丹町の出動拒否問題】猟友会はなぜ活動を再開したのか?
砂川市の裁判とは別に、猟友会と自治体関係者の関係を考えるうえで重要なのが、北海道積丹町の問題だ。
こちらは行政処分ではなく、駆除現場でのトラブルが原因となって活動停止に発展した事例である。
2025年9月27日、284キロのヒグマをめぐるトラブル
2025年9月27日、積丹町の町議会副議長の所有地に設置されていた箱わなに、体重284キロのヒグマがかかった。
現場には猟友会のハンター9人と役場職員3人が駆け付けた。
ハンター側は安全確保のため、現場にいた副議長に離れるよう伝えたが、これをきっかけに口論となった。
報道によると、ハンター側は副議長から威圧的な発言があったと説明。一方、副議長側は問題となった発言の一部を否定するなど、双方の説明には食い違いがあった。
猟友会余市支部は安全確保が難しいとして、翌28日から積丹町への出動を停止した。
町民の不安と行政の対応
出動停止によって、クマが出没した際の対応にも影響が出た。
2025年10月には、町内でヒグマ2頭の目撃情報があり、警察官と町職員が現場に出動したものの、猟友会による警戒活動は見送られた。
町民からは、ハンターが出動しないことへの不安の声が上がった。
この問題で注目すべきなのは、猟友会の活動停止が単なる報酬交渉ではなく、現場での安全管理と信頼関係の問題だったことだ。
2025年11月、謝罪と対応マニュアルで活動再開
問題が解決に向かったのは2025年11月だった。
11月11日、トラブルの発端となった町議会副議長が猟友会の支部長に直接謝罪した。
翌12日には町と猟友会が協議し、ヒグマ捕獲に関する対応マニュアルを作成した。
新たなルールでは、駆除現場に第三者が立ち入らないことや、現場の安全管理を町側が行うことなどが定められた。
その結果、猟友会は11月13日から活動を再開した。
この事例から分かるのは、出動停止の解消には、単にハンター側へ協力を求めるだけでは不十分だということだ。
行政が安全管理のルールを作り、関係者がそれを守る仕組みを整えることが、地域の鳥獣対策を継続するための前提になる。
【報酬格差を比較】クマ駆除の報酬は高い?安い?自治体の費用負担
猟友会をめぐる批判の中で、特に議論になりやすいのが報酬だ。
「命がけの仕事なのに報酬が低い」というハンター側の主張と、「税金を使う以上、支払いには説明責任がある」という住民側の考えがぶつかっている。
自治体によって報酬体系が異なる
2025年11月15日に報じられたFNNの調査では、岩手県内33市町村にアンケートを実施し、21自治体から回答を得ている。
調査では、報酬体系や金額に大きな差があることが明らかになった。
| 自治体 | 報酬体系 | 金額 |
|---|---|---|
| 岩手県遠野市 | ハンター1人の時給 | 952円 |
| 岩手県一戸町 | 猟友会への捕獲報酬 | 1頭5万円 |
| 岩手県一戸町 | ハンターへの時給 | 1,500円 |
| 岩手県平泉町 | 緊急銃猟の報酬 | 1人3万円 |
この比較で注意したいのは、金額の単位が異なることだ。
遠野市は時給、一戸町は団体への捕獲報酬と個人の時給、平泉町は緊急銃猟の際の報酬である。
同じ条件で支払われる金額ではないため、単純にどの自治体が高い、安いと判断することはできない。
しかし、自治体によって報酬の考え方が大きく異なることは明らかだ。
東北地方では報酬増額を検討する自治体が約7割
2025年11月のFNNによる東北6県の調査では、227市町村に質問し、136自治体から回答を得た。
その結果、報酬をすでに増額した自治体は19.1%、今後増額を検討している自治体は49.2%だった。
合計すると、68.3%の自治体が報酬増額を実施または検討している。
また、国の交付金について不足している、または今後不足すると回答した自治体は59.5%だった。
国に交付金の増額を求めた自治体は75.0%に上る。
これらの数字から、報酬問題はハンター個人と自治体の交渉だけでは解決しにくい構造的な課題になっていることが分かる。
費用を負担するのは誰なのか?
基本的に、地域の有害鳥獣捕獲については、依頼する自治体が予算を確保し、猟友会やハンターとの間で報酬や活動条件を調整する。
その財源には自治体の予算のほか、国の交付金などが関係する。
問題は、全国一律の報酬基準がないため、自治体の財政状況によって待遇に差が生まれやすいことだ。
一方で、地域ごとにクマの出没状況、活動人数、必要な作業が異なるため、すべての地域で同じ金額にすることにも課題がある。
必要なのは、最低限の報酬水準や必要経費、危険に対する補償の考え方を明確にしながら、地域の事情に応じて調整できる仕組みだ。
【2026年最新制度】緊急銃猟と北海道猟友会の今後、ハンター不足の深刻さ
2026年の猟友会を取り巻く環境を理解するには、緊急銃猟制度とハンター不足を合わせて考える必要がある。
2025年9月に始まった緊急銃猟制度とは?
2025年4月、鳥獣保護管理法の一部改正が成立し、同年9月から緊急銃猟制度の運用が始まった。
この制度は、クマやイノシシが住宅地など人の日常生活圏に侵入した場合、市町村長の判断で、一定の安全条件を満たしたうえで銃器による捕獲を可能にするものだ。
従来の制度では、市街地に出没したクマへの対応に制約があった。新制度によって、自治体が責任を持って緊急対応を進められるようになった。
ただし、どんな状況でも銃猟が認められるわけではない。
実施には次の4つの条件がある。
1. クマやイノシシが人の日常生活圏に侵入している、または侵入するおそれが大きいこと。
2. 人の生命や身体への危害を防ぐため、緊急の対応が必要であること。
3. 銃猟以外の方法では迅速かつ的確な捕獲が難しいこと。
4. 住民や第三者に弾丸が到達するなど、人への危害のおそれがないこと。
市町村の責任はどこまで及ぶ?
緊急銃猟制度で重要なのは、実施主体が市町村長であることだ。
環境省の説明では、緊急銃猟は市町村の責任の下で行われる。市町村は安全確保の措置を講じ、必要に応じてハンターなどに捕獲を委託する。
事故が起きた場合の責任についても、制度上の整理が進められている。
- 物損事故:市町村長による損失補償の対象となる。
- 人身事故:国家賠償法による対応が想定されている。
- 捕獲者の刑事責任:必要な注意義務を果たして実施した場合、通常は業務上過失致死傷罪の責任を問われることは想定されないと環境省の考え方で説明されている。
- 安全管理:市町村側が実施判断や安全確保措置を担う。
ただし、制度ができたからといって、すべての事故についてハンターが無条件に免責されるわけではない。現場での注意義務や、制度の要件を満たしていたかなどが重要になる。
2026年4月、環境省がガイドラインを改訂
環境省は2026年4月6日、緊急銃猟ガイドラインを改訂した。
改訂の背景には、制度開始後に実際の緊急銃猟が50件以上実施されたことがある。
主な改訂内容は以下のとおりだ。
- 実際に行われた緊急銃猟の事例を7件追加
- 現場での対応工程に関する事例やポイントを16件追加
- 安全確保や実施判断について、実際の運用を踏まえて補足
さらに、2026年版の環境白書によると、2025年度末までの緊急銃猟の実施件数は60件に達した。
これは制度が実際に使われ始めたことを示す数字だ。
今後は制度の存在だけでなく、自治体職員の研修、ハンターとの事前協議、補償体制の整備が実効性を左右する。
北海道猟友会の2026年の方針は変わったのか?
2026年3月27日の最高裁判決後、北海道猟友会の堀江篤会長は、判決について安堵の意を示した。
しかし、判決によって北海道猟友会の方針が全面的に変わったわけではない。
北海道猟友会は2025年8月に示した、ハンター自身の判断による射撃拒否を容認する方針を維持していると、UHBが2026年3月27日に報じている。
これは最高裁判決があっても、現場の安全確保や補償の問題が自動的に解決するわけではないためだ。
最高裁が示したのは行政処分の違法性であり、ハンターがどのような状況でも発砲しなければならないという判断ではない。
ハンター不足と高齢化は深刻
猟友会をめぐる議論で、もう一つ見逃せないのが担い手不足だ。
2026年版環境白書によると、国内の狩猟者数は1970年度の約53万人から2012年度には約18万人まで減少した。
2016年度以降は20万人を超え、微増傾向にあるものの、2008年度以降は60歳以上の狩猟者が全体の6割を超えている。
つまり、狩猟者数が多少回復していても、若い担い手の確保や技術継承は依然として課題なのだ。
こうした状況を受け、国や自治体では鳥獣被害対策実施隊の設置や、自治体職員として活動するガバメントハンターの確保なども進められている。
農林水産省によると、2024年4月時点で鳥獣被害対策実施隊は1,256市町村に設置され、隊員数は42,172人だった。
鳥獣被害対策実施隊は、市町村長が任命・指名した隊員によって構成され、捕獲活動だけでなく、防護柵の設置、追い払い、生息状況の調査なども担当する。
この仕組みを活用すれば、民間の猟友会だけに依存しない地域の鳥獣対策体制を整えやすくなる。
【プロの結論】猟友会への批判は正当なのか?本当に改善すべき問題
ここまでの事件や制度を整理すると、「猟友会おかしい」という批判には、妥当な部分と誤解に基づく部分が混在している。
重要なのは、批判の対象を明確にすることだ。
猟友会への批判が妥当になるケース
次のような問題があれば、住民や自治体が改善を求めるのは当然だ。
- 出動停止について住民への説明が不十分である。
- 地域住民の安全を守る代替策が準備されていない。
- 報酬や経費の決定過程が不透明である。
- 組織内部の意思決定や連絡体制に問題がある。
- 出動の可否について自治体との協議が不足している。
特に、地域住民が危険にさらされているのに、行政と猟友会が対立したまま対策を講じない状態は改善されなければならない。
猟友会への批判が誤解になりやすいケース
一方、以下のような考え方には注意が必要だ。
「猟友会は税金で活動しているのだから、必ず出動すべき」
自治体から報酬を受け取る活動があっても、すべての会員が公務員になるわけではない。契約や委託の内容によって役割や責任も異なる。
「クマを撃つだけなら簡単な仕事」
捕獲活動には安全管理、現場確認、住民対応、移動、事後処理なども伴う。発砲だけを切り取って仕事の価値を判断することはできない。
「最高裁でハンターが勝ったから、今後は自由に撃てる」
これも誤りだ。最高裁判決は特定の行政処分を違法としたもので、猟銃使用に関する法律や安全上の義務をなくしたわけではない。
今後、優先して改善すべき5つの課題
| 改善課題 | 必要な対応 |
|---|---|
| 報酬格差 | 基本報酬や必要経費の目安を整備 |
| 事故時の補償 | 行政・ハンター双方の責任を明確化 |
| 安全管理 | 緊急銃猟のマニュアルと訓練を充実 |
| 担い手不足 | 若手育成とガバメントハンターの確保 |
| 地域との信頼 | 出動停止時の説明と代替対応を徹底 |
最も大切なのは、住民の安全とハンターの安全を対立させないことだ。
クマが住宅地に出没した場合、住民を守るための迅速な対応は必要になる。しかし、そのために現場のハンターが十分な補償もなく危険を引き受ける構造を放置してよいわけではない。
行政が責任を持って安全を確保し、適切な報酬を支払い、ハンターが安心して協力できる環境を整えることが、本当の解決につながる。
【猟友会おかしい】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:猟友会はクマの駆除を拒否しても問題ないのですか?
A1:一律に出動義務があるわけではありません。自治体との契約や委託内容、活動時の安全条件などによって事情は異なります。北海道猟友会も、現場の状況に応じてハンター自身が射撃を拒否することを容認しています。
Q2:猟友会のクマ駆除の報酬はいくらですか?
A2:全国一律の金額はありません。時給、日当、捕獲1頭あたりの報奨金など自治体ごとに異なります。2025年の岩手県内の調査では、時給952円の自治体や、捕獲1頭につき猟友会へ5万円を支払う自治体などが報告されています。
Q3:池上治男さんの裁判は2026年にどうなりましたか?
A3:2026年3月27日、最高裁第三小法廷が北海道公安委員会による猟銃所持許可取消処分を違法と判断し、池上さんの逆転勝訴が確定しました。4月9日には北海道公安委員会が謝罪し、猟銃1丁を返還しています。ただし、廃棄された別の猟銃をめぐって8月17日に新たな損害賠償訴訟を起こしています。
Q4:積丹町の猟友会は現在も出動を拒否していますか?
A4:2025年11月13日に活動を再開しています。町議会副議長による謝罪と、町・猟友会によるヒグマ捕獲対応マニュアルの策定が再開につながりました。
Q5:緊急銃猟制度ができれば猟友会の出動拒否はなくなりますか?
A5:なくなるとは限りません。緊急銃猟制度は市町村長の判断と責任の下で実施する仕組みですが、ハンターの安全や補償、委託条件などの課題は残ります。制度を実際に機能させるには、自治体とハンターの事前協議が欠かせません。
まとめ:猟友会がおかしいのではなく、行政と現場の仕組みを見直す時期に来ている
「猟友会おかしい」という疑問の背景には、クマ駆除の出動拒否、自治体ごとの報酬格差、行政とハンターの責任分担という複数の問題がある。
2026年3月27日の最高裁判決は、砂川市の池上治男さんに対する猟銃所持許可取消処分を違法と判断し、行政の対応がハンターの公益活動を萎縮させる危険性を示した。
また、積丹町の事例では、現場での安全管理と関係者間の信頼が失われると、地域の鳥獣対策そのものが停止することが明らかになった。
緊急銃猟制度や2026年4月の環境省ガイドライン改訂は、こうした問題を改善するための重要な一歩だ。しかし、報酬格差、ハンターの高齢化、事故時の補償、行政の実務能力など、解決すべき課題は残っている。
本当に問われるべきなのは、猟友会が出動を断ることだけではない。住民の命を守るための活動を、なぜ一部の民間ハンターの善意と個人的な負担に依存し続けているのかという点だ。
今後は、自治体が主体的に安全管理と費用負担を担い、猟友会、鳥獣被害対策実施隊、ガバメントハンターが連携できる体制を整える必要がある。
猟友会への批判を考える際には、出動拒否という結果だけでなく、その原因となった行政の対応や制度上の問題まで見ることが欠かせない。それが、住民とハンターの双方を守るための現実的な判断基準となる。 (出典: 猟 友 会 おかしい(Yahoo!ニュース))