【原因を徹底分析】10代・20代・30代の献血離れが進む理由
若年層の献血者数が減少している背景には、単なる関心の低下だけでは説明できない社会構造の変化がある。

厚生労働省が2026年4月に公開した特集記事「日本の未来を変える、若者の献血」では、若年層の献血離れについて、人口減少、学校での献血機会の減少、400mL献血の普及などが取り上げられている。
1. 少子化によって献血できる若者そのものが減少
最も根本的な理由は少子化だ。
献血者数を維持するには、一定数の献血可能年齢の人が必要になる。しかし、出生数の減少によって若年人口そのものが縮小している。
仮に献血に協力する割合が変わらなくても、対象となる人口が減れば、献血者数も減っていく。つまり、献血への関心を高めるだけでは解決できない問題が存在する。
2. 高校時代に献血を経験する機会が減っている
若年層の献血離れを考えるうえで、学校献血の減少も見逃せない。
かつて高校は、若い世代が初めて献血に触れる機会の一つだった。しかし、医療現場で400mL献血の需要が高まり、年齢条件が影響するようになった。
400mL献血は、男性が17歳以上、女性が18歳以上という年齢制限がある。16歳から献血可能な200mL献血とは条件が異なるため、高校生全員が同じように協力できるわけではない。
さらに、新型コロナウイルス感染症の流行によって、学校や企業で実施される集団献血の機会が減少した。献血を身近に経験する入口が失われたことが、その後の若年層の参加にも影響している。
3. 献血に触れる機会が少ないまま社会人になる
高校や大学で献血を経験した人は、その後も献血を生活の中に取り入れるきっかけを持ちやすい。
反対に、学生時代に経験する機会がなければ、社会人になってから自分で献血ルームを探し、予約や受付をする必要がある。
厚生労働省の2026年度の献血推進調査会でも、学校で献血した人が卒業後も継続して協力できるようにすることが課題として示された。
これは、初回献血者を増やすだけでなく、20代から30代にかけて継続して献血する人を確保する必要があることを意味している。
4. 冬から春にかけて献血協力者が減りやすい
献血者数には季節的な変動もある。
日本赤十字社によると、冬場から春先にかけては、風邪などで体調を崩す人が増えるほか、学校や企業、団体の協力を得にくくなり、献血者数が減少しやすい。
血液は長期間保存できないため、特定の時期にまとめて確保すれば解決するわけではない。年間を通じて安定的に献血協力を得る必要がある。
若年層の献血離れは「意識」だけの問題ではない
ここまでの状況を整理すると、若年層の減少には次のような要因が重なっている。
- 少子化による献血可能人口の縮小
- 400mL献血の年齢条件と高校献血の機会
- 新型コロナウイルス感染症による集団献血機会の減少
- 学生時代から社会人への継続的な参加の難しさ
- 季節や体調による献血者数の変動
献血に関心がない若者が増えたと単純化するのは適切ではない。献血を知る機会、実際に参加する機会、継続するための環境をどう整えるかが問われている。
【血液製剤の供給実績】輸血用血液と免疫グロブリンの需要はどう違う?
献血不足の問題を理解するには、集められた血液がどのように使われるのかを知る必要がある。
献血された血液は、大きく分けて「輸血用血液製剤」と「血漿分画製剤」の原料になる。両者は用途も製造工程も異なり、需給状況にも違いがある。
輸血用血液製剤は令和7年度に1,752万単位を供給
輸血用血液製剤は、主に手術、がん治療、出産時の大量出血などに使用される。赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤などが代表的だ。
日本赤十字社が厚生労働省の2026年7月1日の調査会で報告した令和7年度の供給実績は次のとおり。
- 赤血球製剤:652万単位
- 血漿製剤:215万単位
- 血小板製剤:884万単位
- 合計:1,752万単位
この数字は製剤の実際のバッグ数ではなく、200mL全血献血から得られる量を1単位とする換算値だ。実際の供給数は合計507万バッグとなっている。
同年度には、血漿分画製剤の原料となる血漿も120万リットル供給された。日本赤十字社の報告では、輸血用血液製剤の需要は平成27年度から令和7年度まで全体としてほぼ横ばいで推移している。
血漿分画製剤は免疫グロブリンの需要増加が課題
もう一つの重要な用途が、血漿分画製剤だ。
血液から血漿を取り出し、その中に含まれるタンパク質などを分離・精製して医薬品にする。代表的な製剤には、次のものがある。
- 免疫グロブリン製剤: 重症感染症、免疫機能が低下した疾患、川崎病、自己免疫性疾患などに使用される。
- アルブミン製剤: 出血や熱傷などによって血液中のタンパク質が不足する場合などに使用される。
- 血液凝固因子製剤: 血友病など、血液が固まりにくい疾患の治療に使用される。
厚生労働省の2026年4月の特集記事では、献血された血液の約55%が血漿分画製剤の原料に、約45%が輸血用に使われていると説明されている。
つまり、献血は手術や事故の輸血だけでなく、慢性的な疾患の治療に使われる医薬品の製造も支えている。
免疫グロブリン製剤は国内自給率の低下が問題
2026年に特に注意したいのが、免疫グロブリン製剤の需給状況だ。
医療現場での適応拡大などを背景に、免疫グロブリン製剤の需要と供給量は増加している。一方、国内メーカーの製造能力は限界に近づいており、国内の献血血液だけでは需要を満たしにくい状況になっている。
2026年7月1日の厚生労働省の献血推進調査会では、免疫グロブリン製剤の国内自給率が令和7年度の速報値で60%を下回る状況と説明された。不足分を輸入製剤で補っていることも報告されている。
製造面では、2025年10月に武田薬品工業の成田工場で製造上の問題が発生し、一時的に製造が停止した経緯もある。2026年の厚生労働省の運営委員会では、代替供給や製造体制の見直し、国内生産能力の強化が議論された。
また、2027年度には日本血液製剤機構の京都工場でメンテナンスが予定されており、安定供給に向けた在庫確保も課題となっている。
ここで重要なのは、免疫グロブリンの国内自給率が低いことと、患者への製剤供給が直ちに停止することは同義ではないという点だ。輸入やメーカー間の代替供給によって補われているが、海外の供給状況にも左右されるため、国内生産体制を強化する必要がある。
【将来予測】2045年に日本の献血者不足はどこまで深刻化する?
2026年の献血不足問題で最も大きな懸念は、現在の献血体制を2040年代まで維持できるかという点にある。
献血可能人口は2045年までに約1,500万人減少する見込み
厚生労働省が2026年4月に公開した特集記事では、日本赤十字社のデータに基づく献血可能年齢人口の推計が紹介されている。
献血可能年齢人口の将来推計
2025年
2045年
20年間の減少幅
2025年比で約19%減少する推計。
この推計は、献血可能年齢に該当する16〜69歳の人口を対象としている。2045年には、現在よりも献血に協力できる人の母数が大幅に小さくなる見込みだ。
血液を必要とする高齢者は増える
献血者の減少と同時に考えなければならないのが、医療需要の変化だ。
日本赤十字社によると、輸血用血液製剤を使用する患者の約85%は50歳以上。一方、献血協力者の60%以上は50歳未満の世代が占めている。
つまり、輸血を必要とする高齢者が増える一方、その医療を支える献血者は若い世代を中心に確保しなければならないという人口構造上の課題がある。
さらに、がん治療や手術などによる輸血需要だけでなく、免疫グロブリン製剤の需要増加も血液事業に影響する。輸血用製剤の需要が比較的横ばいでも、原料血漿を必要とする量は増えているためだ。
2045年の献血者数に関する試算も警鐘を鳴らす
2025年に開催された第49回日本血液事業学会総会の抄録には、日本赤十字社血液事業本部による2045年の献血者構成の試算が掲載されている。
現状の献血協力傾向のまま献血可能人口が減少すると仮定した場合、2045年の延べ献血者数は約350万人になるとの推計だ。さらに、免疫グロブリン製剤の需要増加を踏まえて必要献血量を約580万本と仮定すると、現在と同じ協力傾向を維持するだけでは安定供給に不安が残るとしている。
これは確定した将来予測ではなく、人口と献血行動を前提にしたシナリオ試算だ。それでも、現状維持だけでは将来の需給ギャップを埋められない可能性を示す重要な研究結果である。
【プロの結論】献血不足を解消するために必要な3つの取り組み
2026年のデータから見えてくるのは、献血者数の総数を一時的に増やすだけでは、長期的な問題を解決できないということだ。
1. 若年層の初回献血と継続参加を増やす
10代の献血者数は令和7年度に微増した。しかし、20代・30代の減少を補うには至っていない。
厚生労働省と日本赤十字社には、学校献血や大学での啓発を通じて初回献血の機会を増やすとともに、卒業後も継続して参加できる仕組みが求められる。
令和7年度には「THINK献血」をテーマとした推進活動や、20歳前後を対象とした「はたちの献血」キャンペーンなどが実施された。キッザニア甲子園での献血パビリオン出展など、子どもの段階から献血を知る機会をつくる取り組みも行われている。
2. 血漿成分献血と国内製造体制を強化する
輸血用血液製剤だけでなく、免疫グロブリンなどの血漿分画製剤を安定して供給するためには、原料血漿の確保が重要になる。
厚生労働省が目指しているのは、国内の製造施設や生産能力を強化し、免疫グロブリン製剤の国内自給率を100%に近づけることだ。
献血者を増やす施策と、国内メーカーの製造設備を更新する施策を並行して進めなければ、需要増加への対応は難しい。
3. 献血を一時的な善意ではなく継続的な社会基盤にする
献血は、災害や事故が起きたときだけ必要になるものではない。
血小板製剤の有効期間は採血後6日間、赤血球製剤でも28日間と短い。長期間保存できないため、毎日の医療を支えるには定期的な献血が欠かせない。
日本赤十字社は、献血ルームや献血バスを通じて協力を呼びかけている。健康状態や採血基準を満たし、無理なく参加できる人が定期的に協力することが、長期的な安定供給につながる。
2026年に献血状況を判断するときのチェックポイント
ニュースやSNSで献血不足が話題になったときは、次の3点を確認すると実態を把握しやすい。
- 献血者数: 全体の人数だけでなく、10代・20代・30代の推移を見る。
- 血液製剤の供給実績: 輸血用製剤と血漿分画製剤を分けて確認する。
- 国内自給率: 輸入で補っている製剤がないか、国内製造能力に問題がないかを見る。
この3つを分けて確認することが、献血不足の実態を正しく理解するための判断基準になる。
【献血不足状況】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、日本では献血不足が起きていますか?
A1:将来の献血者不足が懸念されていますが、令和7年度の全国実績では輸血用血液製剤1,752万単位が供給され、必要量は不足なく確保されました。ただし、免疫グロブリン製剤の国内自給率低下など、製剤別の課題は残っています。
Q2:令和7年度の献血者数500万1,000人は多いのでしょうか?
A2:前年度より約1万4,000人増加しており、全体では改善しています。ただし、これは延べ献血者数です。10〜30代は前年度より約2万3,000人減っており、年代別に見ると課題が残っています。
Q3:若者の献血者数が減少している最大の理由は何ですか?
A3:少子化による人口減少に加え、学校や企業での集団献血の機会が減ったことなどが背景にあります。400mL献血の年齢条件も高校生の献血機会に影響しています。
Q4:献血不足は2045年までに深刻化する可能性がありますか?
A4:あります。献血可能年齢人口は2025年の約7,781万人から2045年には約6,277万人へ減少する推計です。医療需要や免疫グロブリン製剤の需要増加も考えると、若年層の献血協力と国内生産体制の強化が必要です。
Q5:献血は毎年協力する必要がありますか?
A5:血液製剤は保存期間が短いため、継続的な協力が役立ちます。ただし、献血には年齢・体重・健康状態・前回の献血からの経過日数などの条件があります。日本赤十字社が定める採血基準を確認し、体調を優先して無理のない範囲で協力することが大切です。
まとめ:2026年の献血不足は将来の安定供給を左右する課題
2026年の日本の献血状況は、全体の献血者数だけを見ると大きく崩れてはいない。令和7年度には延べ500万1,000人が献血に協力し、献血率も6.2%を維持した。輸血用血液製剤についても、必要量が確保されている。
しかし、10代・20代・30代の献血者数は合計約2万3,000人減少しており、若年層の献血基盤は弱くなっている。さらに、2045年には献血可能人口が約6,277万人まで縮小する見込みだ。
加えて、免疫グロブリン製剤の需要増加と国内自給率の低下は、献血を取り巻く問題が単なる輸血用血液の確保にとどまらないことを示している。
2026年の献血不足問題の本質は、今すぐ全国で血液が枯渇していることではなく、将来も必要な血液と医薬品を安定して供給できる仕組みを維持できるかどうかにある。
若い世代が献血を知り、初めて参加し、その後も無理なく継続できる環境を整えること。そして国内の血漿分画製剤の製造能力を高めること。この両輪が、2045年以降の日本の輸血医療を支える重要な鍵となる。 (出典: 献血 不足 状況(Yahoo!ニュース))