性的暴行とは何を指す?2023年改正の法律・同意の基準・被害時の対応を徹底解説
性的暴行とは、本人の意思に反して性的な行為を強要したり、同意のない性的接触や性交等を行ったりすることを指す言葉です。ただし、「性的暴行」は刑法上の独立した罪名ではありません。実際の行為や状況によって、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪など、適用される法律上の罪名が異なります。
2023年7月13日には刑法が改正され、従来の強制性交等罪・準強制性交等罪などが見直されました。新たに設けられた不同意性交等罪と不同意わいせつ罪では、暴行や脅迫だけでなく、アルコール、薬物、恐怖によるフリーズ、立場を利用した圧力なども重要な判断要素になっています。さらに、2025年6月1日には拘禁刑が導入され、2026年現在の刑法では新しい刑罰名称が適用されています。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 性的暴行の意味:同意のない性的な行為を広く指す言葉であり、法律上は行為の内容や状況に応じて罪名が判断される。
- 法律上の重要な改正:2023年7月13日から不同意性交等罪(刑法177条)と不同意わいせつ罪(刑法176条)が施行され、暴行・脅迫がないケースも処罰対象になり得る。
- 被害に遭った場合:警察への相談だけでなく、全国共通番号「#8891」のワンストップ支援センターで医療・心理・法律面の支援を受けられる。
【基礎知識】性的暴行とは?一般的な意味と法律上の定義を解説
性的暴行とは、相手の意思を無視して行われる性的な行為を指す一般的な表現です。身体への性的接触、性交等の強要、抵抗できない状態を利用した性的行為など、幅広い行為が含まれます。
ただし、日常会話や報道で使われる「性的暴行」と、刑法に定められた犯罪の構成要件は必ずしも一致しません。法律上の判断では、何をされたのか、どのような状況だったのか、相手がどのような状態にあったのかが重要になります。
性的暴行と性暴力・性犯罪の違い
似た意味で使われる言葉に「性暴力」と「性犯罪」があります。それぞれの違いを理解すると、報道や法律の内容を正しく読み取れます。
- 性的暴行:同意のない性的な行為を表す一般的な言葉。法律上の特定の罪名ではない。
- 性暴力:本人の意思に反する性的な行為や、性的な尊厳・自己決定権を侵害する行為を幅広く表す言葉。
- 性犯罪:刑法や特別法によって犯罪として定められ、処罰の対象となる行為。
例えば、本人が望まない身体への接触や性的な行為は性暴力に当たり得ます。その内容や状況によっては、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪、性的姿態等撮影罪などの犯罪が成立する可能性があります。
性的暴行は男女を問わず起こり得る
性的暴行の被害者は女性だけではありません。男性、子ども、高齢者、性的マイノリティなど、性別や年齢にかかわらず被害に遭う可能性があります。
また、加害者が見知らぬ人物とは限りません。交際相手、配偶者、友人、職場の上司、教師など、日常的な関係にある人物による行為も問題になります。
内閣府男女共同参画局も、同意のない性的な行為は身近な人や夫婦・恋人の間でも起こり得ると説明しています。交際関係や婚姻関係があることだけで、性的行為への同意が成立するわけではありません。

【法律を比較】2023年刑法改正と不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の成立要件
性的暴行に関係する法律を理解するうえで、特に重要なのが刑法176条と刑法177条です。2023年の刑法改正によって、これまでの強制わいせつ罪や強制性交等罪などの規定が整理され、不同意わいせつ罪と不同意性交等罪が新設されました。
2023年7月13日から何が変わったのか
2023年6月に成立した刑法及び刑事訴訟法の一部改正法では、性犯罪の成立要件が見直されました。大きな変更点は、従来の暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能という要件を改め、同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態に着目する仕組みにしたことです。
改正法の主な規定は2023年7月13日に施行されました。これにより、相手が激しく抵抗できなかった場合や、明確に拒絶の言葉を発していなかった場合でも、具体的な状況によって犯罪が成立する可能性が明確になりました。
刑法176条と177条の違い
両者の最も大きな違いは、対象となる性的行為の内容です。
| 法律・制度 | 対象となる行為 | 成立の主なポイント | 2026年現在の法定刑 |
|---|---|---|---|
| 刑法176条・不同意わいせつ罪 | 同意のないわいせつな行為 | 同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせる、またはその状態に乗じることなど | 6月以上10年以下の拘禁刑 |
| 刑法177条・不同意性交等罪 | 性交、肛門性交、口腔性交、膣や肛門への身体の一部・物の挿入など | 刑法176条1項各号に掲げる事情などによって同意しない意思を実現することが困難な状態にさせる、またはその状態に乗じることなど | 5年以上の有期拘禁刑 |
| 刑法179条・監護者わいせつ・監護者性交等 | 18歳未満の者に対するわいせつ行為や性交等 | 現に監護する者の影響力を利用すること | それぞれ176条・177条の例による |
刑法177条の「性交等」には、一般的な性交だけでなく、口腔性交や肛門性交、膣や肛門への身体の一部(陰茎を除く)または物の挿入も含まれます。
また、176条と177条には、性的な行為ではないと誤信させたり、行為者について人違いをさせたりして性的行為を行うケースも規定されています。
なお、2025年6月1日には懲役と禁錮が廃止され、新たに拘禁刑が導入されました。そのため、2026年現在の刑法を説明する際には、改正直後の資料に記載されている「懲役」ではなく、現行法の「拘禁刑」という表記を確認する必要があります。
性交同意年齢は13歳から16歳未満へ引き上げ
2023年改正では、いわゆる性交同意年齢も変更されました。従来は13歳未満だった基準が、16歳未満に引き上げられています。
具体的には、次のような規定です。
- 13歳未満:相手が13歳未満であれば、性的行為をしたこと自体が不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の対象になり得る。
- 13歳以上16歳未満:行為者が相手より5歳以上年長の場合、同様に年齢要件による処罰対象となり得る。
ここで注意したいのは、年齢差が5歳未満なら常に問題がないという意味ではないことです。例えば、14歳と18歳の間でも、恐怖や立場による影響力など、通常の成立要件に該当する事情があれば犯罪が成立する可能性があります。
法務省の改正Q&Aでは、年齢差の基準は13歳以上16歳未満の人に関する特別な規定であり、それ以外の不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の成立可能性を否定するものではないと説明されています。
さらに、性犯罪の公訴時効も改正され、原則として従来の期間から5年延長されました。被害者が18歳未満だった場合には、18歳になるまでの期間を加算する仕組みも設けられています。
【重要】暴行・脅迫がない場合でも性的暴行は犯罪になる?
性的暴行について多くの人が誤解しやすいのが、「殴られたり脅されたりしていなければ、性犯罪は成立しない」という考え方です。
2023年改正後の刑法では、暴行・脅迫以外にも、相手が同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難になる原因が具体的に規定されています。
不同意性交等罪の成立に関係する8つの事情
刑法176条1項では、不同意わいせつ罪の成立に関係する事情として、次の8つが示されています。刑法177条も、この規定を参照しています。
- 暴行または脅迫:身体を押さえ付ける、危害を加えると脅すなどの行為。
- 心身の障害:心身の障害によって意思決定や意思表示が難しい状態。
- アルコールまたは薬物の影響:飲酒や薬物によって正常な判断や意思表示が困難になっている状態。
- 睡眠その他の意識不明瞭:眠っている、意識がはっきりしないなどの状態。
- 意思形成・表明・全うする時間の不存在:不意打ちなどによって、拒否する意思を形成したり表明したりする時間がない状態。
- 予想外の事態による恐怖・驚愕:突然の出来事に恐怖を感じ、身体が動かなくなる、いわゆるフリーズ状態など。
- 虐待に起因する心理的反応:過去の虐待による恐怖心や無力感などから、拒否する意思を実現できない状態。
- 経済的・社会的な地位による影響力:上司と部下、教師と生徒などの関係で、不利益を受けることを恐れて拒否できない状態。
これらの事情によって同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせた場合だけでなく、相手がすでにその状態にあることに乗じて性的行為をした場合も、犯罪が成立し得ます。
抵抗しなかったことは同意の証明にならない
恐怖を感じたとき、人は必ずしも声を出したり、身体を動かして抵抗したりできるわけではありません。予想外の出来事に直面し、頭が真っ白になったり、身体が動かなくなったりする反応もあります。
そのため、抵抗しなかった、逃げなかった、助けを呼ばなかったという事情だけで、本人が同意していたと判断することはできません。
また、被害直後に普段と変わらないように振る舞ったり、相手と連絡を取り続けたりしたとしても、それだけで性的行為への同意があったことにはなりません。
暴行・脅迫がなければ必ず犯罪になるわけではない
一方で、同意がなかったという事実だけをもって、直ちに刑法176条や177条の犯罪が成立すると断定することもできません。
刑法上は、行為の内容に加えて、同意しない意思の形成・表明・全うが困難になる事情、その状態を生じさせた経緯、相手がその状態を利用したかなどを具体的に判断します。
つまり、暴行や脅迫がないことは犯罪成立を否定する決定的な理由にはならない一方、実際の成立判断には法律上の要件を満たすことが必要です。

【性的同意の基準】どこからが不同意?恋人・夫婦でも成立するのか
性的同意とは、性的な行為をする前に、相手がその行為を望んでいるかを確認し、互いの意思を尊重することです。
内閣府男女共同参画局は、性的同意を考える際に、対等な関係であることや、相手が拒否できる環境があることを重視しています。
性的同意を判断する5つの基本原則
- 積極的な意思を確認する:沈黙や反応がないことを同意と決め付けない。
- 行為ごとに確認する:キスに同意したからといって、性交にも同意したことにはならない。
- いつでも撤回できる:最初は同意していても、途中で嫌になれば中止を求められる。
- 自由な意思決定ができる状態である:意識がない、酩酊している、恐怖で拒否できないなどの状態を利用しない。
- 相手との力関係を考慮する:上下関係や経済的な依存関係によって、自由に拒否できない状況を作らない。
特に重要なのは、性的同意が一度成立すれば、その後のすべての行為が許されるという考え方は誤りだということです。相手の意思は行為の途中でも変わります。
恋人や夫婦でも不同意性交等罪は成立する
「付き合っている相手だから」「結婚しているから」という理由で、性的行為への同意が自動的に成立することはありません。
刑法176条と177条には、婚姻関係の有無にかかわらず処罰する旨が明記されています。したがって、夫婦間や恋人間であっても、法律上の成立要件を満たせば不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立する可能性があります。
身体の反応と本人の意思は別の問題
性的行為の最中に身体が反応したことも、同意の証拠にはなりません。
内閣府の性暴力に関する案内では、男性の被害についても、勃起や射精は性的行為に同意した証しではなく、自然な生理反応であると説明されています。
これは女性の被害にも共通する重要な考え方です。身体にどのような反応が起きたかと、本人がその行為を望んでいたかは区別して考える必要があります。
【被害に遭った場合】証拠の保全・被害届・告訴と相談窓口
性的暴行を受けた場合、最初に優先すべきなのは本人の安全と心身の健康です。警察への届出や刑事手続について、すぐに決断できなくても構いません。
被害後の対応には、医療機関への相談、証拠の保全、警察への相談、法律相談など複数の選択肢があります。本人の状態や希望に応じて進めることができます。
性的暴行の証拠として考えられるもの
性犯罪の立証では、身体に残った傷やDNAだけでなく、被害前後の状況を示すさまざまな資料が参考になります。
- 身体的な証拠:けがの診断書、医療機関で採取された資料、身体や衣服に残った痕跡。
- 衣服・所持品:被害時に着用していた衣服や下着、飲食物の残りなど。
- デジタル記録:LINEなどのメッセージ、メール、通話履歴、写真、動画、位置情報の記録。
- 周囲の証言:被害前後の様子を知る友人や家族、目撃者などの証言。
- 被害直後の記録:日時、場所、相手の言動、当時の状況などを記したメモ。
内閣府男女共同参画局は、警察や医療機関に相談する際、被害時に着ていた衣服や下着を洗わずに持参すること、可能であれば身体を洗う前に相談することを案内しています。飲食物の残りがある場合も、証拠として役立つ可能性があります。
ただし、すでに入浴した、着替えた、時間が経過した、証拠が手元にないという場合でも、相談を諦める必要はありません。被害から72時間以上経過していても相談できます。妊娠や性感染症などの心配がある場合も、早めに医療機関へ相談してください。
被害届と告訴はどう違う?
警察への申告には「被害届」と「告訴」があります。両者は似ていますが、法的な意味が異なります。
- 被害届:犯罪被害に遭った事実を警察などの捜査機関に申告するもの。
- 告訴:犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思を正式に示すもの。
法務省によると、不同意性交等罪などの性犯罪は親告罪ではありません。そのため、被害者による告訴がなくても、法律上は裁判で犯人を処罰することが可能です。
ただし、告訴が不要だからといって、被害者の意思が軽視されるわけではありません。検察官は起訴を判断する際、被害者の意思を丁寧に確認し、心情に配慮するよう努めることとされています。
2026年に利用できる主な性犯罪被害相談窓口
相談先は警察だけではありません。医療的な支援や心理的なケア、弁護士への相談などをまとめて受けられる仕組みも整備されています。
1.性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
全国共通番号は#8891(はやくワンストップ)です。電話をかけると、最寄りのワンストップ支援センターにつながります。
主な支援内容は次のとおりです。
- 産婦人科などの医療機関との連携
- 緊急避妊や性感染症検査に関する支援
- 心理カウンセリング
- 警察への相談や医療機関への同行
- 弁護士など専門家につなぐ法律面の支援
通話料は無料ですが、一部のIP電話などからは接続できない場合があります。また、各センターの受付時間は地域によって異なります。
2.性犯罪被害相談電話(警察)
全国共通番号は#8103(ハートさん)です。各都道府県警察の性犯罪被害相談窓口につながり、性犯罪被害や警察への届出について相談できます。原則24時間対応・通話料無料です。
3.警察相談専用電話
緊急の事件・事故ではないものの、警察に相談したい場合は#9110を利用できます。差し迫った危険がある場合は110番に連絡してください。
4.性暴力に関するSNS相談「Cure time(キュアタイム)」
電話で話すことが難しい人には、内閣府が案内するSNS相談という選択肢もあります。チャットを通じて、被害に関する悩みや支援について相談できます。
性犯罪被害者の医療費や支援制度
性犯罪被害者に対しては、警察による医療費などの公費負担制度もあります。
警察庁の案内では、一定の条件や地域ごとの制度に応じて、初診料、診断書料、性感染症検査費用、緊急避妊に関する費用、人工妊娠中絶費用などを公費で負担する取り組みが紹介されています。
また、ワンストップ支援センターでは、警察への相談をすぐに決めていない場合でも、医療や心理面の支援について相談できます。利用できる制度や費用負担の範囲は地域や状況によって異なるため、窓口で確認することが大切です。

【よくある質問】性的暴行とはに関するFAQ
Q1:性的暴行とは、どのような行為を指しますか?
A1:本人の意思に反して行われる性的な接触や性交等を広く指す一般的な言葉です。法律上は、行為の内容や状況に応じて不同意わいせつ罪、不同意性交等罪などに該当するか判断されます。
Q2:暴行や脅迫がなくても不同意性交等罪は成立しますか?
A2:成立する可能性があります。2023年の刑法改正により、アルコールや薬物の影響、睡眠、恐怖によるフリーズ、立場による影響力なども法律上の判断要素になりました。ただし、具体的な成立には法律で定められた要件を満たす必要があります。
Q3:性的暴行の被害に遭った場合、証拠がなくても相談できますか?
A3:相談できます。証拠が残っていない場合や、被害から時間が経過している場合でも、ワンストップ支援センターや警察に相談できます。まずは#8891または#8103に連絡し、医療・心理・法律面の支援について話を聞いてもらう方法があります。
まとめ:性的暴行を正しく理解するための法律と判断基準
性的暴行とは、同意のない性的な行為を広く指す言葉です。ただし、法律上の罪名は一つではなく、具体的な行為や被害時の状況によって適用される規定が異なります。
2023年7月13日に施行された刑法改正では、不同意性交等罪と不同意わいせつ罪が設けられ、暴行や脅迫だけでは説明できなかった性犯罪の状況にも対応する仕組みが整備されました。相手が拒否する意思を形成・表明・実現することが困難な状態にあったか、その状態を利用したかという点が重要です。
また、性的同意は恋人や夫婦という関係だけで成立するものではありません。沈黙、身体の反応、過去の性的関係などを、現在の同意の証拠と決め付けることはできません。
【プロの結論】
性的暴行を判断する際に最も重要なのは、被害者がどれだけ抵抗したかではなく、実際にどのような行為があり、どのような状況で意思決定が妨げられていたかという点です。法律の要件を正確に理解することは、被害者の権利を守るだけでなく、性犯罪に関する誤解や偏見をなくすことにもつながります。
もし被害に遭った本人や身近な人が悩んでいるなら、証拠の有無や警察への届出を一人で判断する必要はありません。まずは#8891や#8103などの専門窓口に相談し、安全の確保と心身のケアを優先してください。
性暴力の被害を受けた人が責められる理由はありません。正しい法律知識と支援制度を知ることが、被害からの回復と再発防止に向けた第一歩になります。
主な公的根拠資料
- 法務省「性犯罪関係の法改正等 Q&A」
- e-Gov法令検索「刑法」第176条・第177条・第179条
- 内閣府男女共同参画局「性犯罪・性暴力とは」「被害者支援」
- 警察庁「犯罪被害者等施策・性犯罪被害相談窓口」
- 法務省「捜査段階での被害者支援」
※法律の説明は2026年11月時点の現行法を基準としています。個別事件の適用法令や成立要件は、行為時期や具体的事情によって異なります。 (出典: 性 的 暴行 と は(Yahoo!ニュース))