閉経前の生理量が多いのはなぜ?40代の原因・受診目安・検査と治療を徹底解説
40代に入ってから生理の量が急に増えた、以前より大きな血の塊が出る、ナプキンを何度も交換しなければならない。こうした変化に気づき、「そろそろ閉経が近いから仕方がないのだろうか」と不安を感じている人は少なくありません。実際、閉経前の更年期には卵巣機能の変化によって排卵が不規則になり、月経量が増えたり、出血期間が長くなったりすることがあります。
しかし、40代の過多月経は更年期だけが原因とは限りません。子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどの病気が隠れている場合もあります。2026年4月には日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会が編集する「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2026」も発行され、婦人科診療における最新の指針が示されています。出血量の判断方法から貧血のサイン、検査、治療、受診のタイミングまで、医学的な情報をもとに整理します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:閉経前は排卵異常によって月経量が増えたり、出血期間が長くなったりすることがある。
- 要点2:子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープなど、治療が必要な病気も原因になる。
- 要点3:ナプキンが1〜2時間もたない、大きな血の塊が頻繁に出る、めまいや動悸がある場合は婦人科への相談が必要。
【原因を解説】閉経前に生理量が増えるのはなぜ?更年期と排卵異常の関係
閉経前の生理量が増える背景には、卵巣機能の変化が関係している場合があります。特に40代は、月経周期や排卵の状態が変化しやすい時期です。
40代から始まる卵巣機能の変化
日本人女性の平均閉経年齢は約50.5歳です。一般的に閉経前後の5年間ずつ、合計約10年間を更年期と呼び、45〜55歳頃がその目安になります。
閉経とは、月経が永久に停止した状態です。最後の月経から12カ月以上月経がないことを確認して、初めて閉経と判断されます。そのため、40代で月経周期が乱れたり、経血量が変わったりしていても、すでに閉経したという意味ではありません。
この時期には卵巣内の卵胞が減少し、エストロゲンやプロゲステロンの分泌が不安定になります。ホルモンの変動に伴って排卵のタイミングが変わり、月経周期や出血量にも影響が出ます。日本産婦人科医会の更年期に関する解説でも、卵巣機能の低下とホルモン動態の変化が更年期の身体的変化に関係すると説明されています。
(参考:日本産婦人科医会、更年期障害の検査・診断)
閉経移行期の排卵異常が過多月経を招く仕組み
特に注目したいのが、閉経移行期に起こる排卵異常です。
通常の月経周期では、排卵後に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)が子宮内膜の状態を調整します。妊娠が成立しなければ、ホルモンの変化によって子宮内膜が剥がれ落ち、月経として排出されます。
一方、排卵が起こらない周期では、十分なプロゲステロンが分泌されないことがあります。エストロゲンの作用を受け続けた子宮内膜が厚くなり、その内膜が不規則に剥がれることで、出血が長引いたり、一度に大量に出血したりする場合があります。
日本産婦人科医会の「排卵異常」に関する解説では、閉経移行期には排卵に関連する異常子宮出血(AUB-O)が多くみられるとされています。特に月経周期が不規則になり始める時期には、出血の間隔・持続期間・量が大きく変化することがあります。
ただし、閉経移行期の排卵異常と判断する前に、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの器質的な原因を調べることが大切です。
(参考:日本産婦人科医会「排卵異常」)
閉経前の生理量が増えることと閉経が近いことは同じではない
生理量が増えたからといって、必ずしも閉経が近づいているとは限りません。
閉経移行期には、月経周期が短くなる人もいれば、反対に間隔が長くなる人もいます。出血量についても、以前より多くなる場合と少なくなる場合があり、個人差があります。
また、月経量が増えた原因が子宮筋腫や子宮腺筋症であれば、更年期のホルモン変動とは別に治療が必要になる可能性があります。年齢だけで原因を判断せず、以前と比べた変化を確認することが重要です。

【病気との関係】40代の過多月経で考えられる5つの原因
閉経前の生理量が多い場合、原因は大きく分けてホルモンや排卵の変化によるものと、子宮などに病変があるものに分類されます。
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の2026年版診療ガイドラインを踏まえた専門家向けの臨床解説でも、過多月経の原因として子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症、子宮筋腫、悪性腫瘍、子宮内膜増殖症、排卵障害、血液凝固異常などが挙げられています。
1.子宮筋腫:経血量が増える代表的な原因
子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。30代以降に多く、40代では珍しくない病気です。
筋腫ができる場所によって、症状の現れ方は異なります。特に子宮の内側に突出する粘膜下筋腫は、小さくても過多月経や過長月経を引き起こしやすい特徴があります。
代表的な症状は次のとおりです。
- 以前より生理の量が明らかに増えた。
- レバー状の血の塊が頻繁に出る。
- 生理が長引く。
- 貧血によるめまいや疲労感がある。
- 下腹部の圧迫感や頻尿がある。
子宮筋腫があっても、必ずしも治療が必要になるわけではありません。筋腫の大きさ、位置、数、症状の程度などを踏まえて、経過観察や薬物療法、手術などが検討されます。
日本婦人科腫瘍学会も、筋腫の位置や大きさによって過多月経や貧血などの症状が異なると説明しています。
2.子宮腺筋症:生理量の増加と強い生理痛が特徴
子宮腺筋症は、本来は子宮内膜に存在する組織が子宮の筋層内に入り込んで増殖する良性疾患です。
40代に多く、過多月経と月経困難症が代表的な症状です。子宮の筋層に異常が生じることで、子宮の収縮や止血機能に影響し、出血量が増えることがあります。
次のような変化がある場合は、子宮腺筋症も考えられます。
- 以前より生理痛が強くなった。
- 経血量が増え、出血期間も長くなった。
- 生理中の下腹部痛が強い。
- 慢性的な骨盤周辺の痛みがある。
診断には経腟超音波検査やMRIが用いられます。治療は症状の程度や妊娠希望などを考慮し、ジエノゲスト、ホルモン療法、子宮内システムなどの薬物療法や手術が検討されます。
日本産婦人科医会の2026年に向けた専門家向け解説でも、子宮腺筋症は40歳代に発症のピークがあり、過多月経や月経困難症を主症状とする疾患として説明されています。
3.子宮内膜ポリープ:不正出血を伴うこともある
子宮内膜ポリープは、子宮内膜の表面から突出する良性の病変です。子宮内腔にできるため、月経量が増える原因になるほか、月経と月経の間に出血する不正出血を引き起こすことがあります。
特に注意したいのは、通常の月経とは違うタイミングで出血が起こるケースです。
子宮内膜ポリープは経腟超音波検査で疑われることがあり、必要に応じて子宮鏡検査や組織検査などで詳しく調べます。
症状がある場合や、悪性の可能性を否定する必要がある場合には、子宮鏡下手術などによる摘出が検討されます。良性の病変であっても、不正出血を伴う場合は放置せず婦人科に相談しましょう。
4.子宮内膜増殖症・子宮体がんなどの内膜の病変
子宮内膜増殖症は、子宮内膜が過剰に増殖する状態です。排卵異常などによってホルモンのバランスが崩れた場合にも生じることがあります。
一部には異型を伴うタイプがあり、子宮体がんとの関連が問題になります。特に不規則な出血や月経以外の出血が続く場合は、内膜の状態を確認する必要があります。
40代だからといって、出血の変化をすべて更年期のせいにするのは適切ではありません。年齢、肥満、糖尿病、排卵障害などの背景も踏まえて検査の必要性が判断されます。
5.血液凝固異常や内分泌・代謝の問題
過多月経の原因は子宮だけにあるとは限りません。血液が固まりにくい病気や、甲状腺機能などの内分泌・代謝の異常が関係することもあります。
特に初経の頃から出血量が多かった人、鼻血が止まりにくい人、家族に出血しやすい人がいる場合には、血液凝固異常の検査が検討されます。
また、服用中の薬やホルモン製剤が出血に影響することもあるため、受診時には現在の服薬状況を伝えることが大切です。
原因別の症状・検査・特徴を比較
| 原因・疾患 | 主な特徴 | 確認に使われる検査 |
|---|---|---|
| 閉経移行期の排卵異常 | 月経周期や出血量が不規則になる。出血が長引く場合もある。 | 問診、超音波検査、必要に応じた血液検査 |
| 子宮筋腫 | 過多月経、過長月経、貧血。粘膜下筋腫は出血が多くなりやすい。 | 経腟超音波検査、MRI |
| 子宮腺筋症 | 過多月経、強い生理痛、慢性的な骨盤痛。 | 経腟超音波検査、MRI |
| 子宮内膜ポリープ | 過多月経、月経以外の不正出血。 | 経腟超音波検査、子宮鏡検査、必要に応じて組織検査 |
| 子宮内膜増殖症・子宮体がん | 不規則な出血、持続する異常出血など。 | 経腟超音波検査、子宮内膜組織検査など |
| 血液凝固異常 | 初経からの過多月経、ほかの部位でも出血しやすい。 | 血算、血液凝固検査など |
この比較から分かるように、同じ「生理量が多い」という症状でも原因は異なります。出血量だけで病気を特定することはできず、痛み、不正出血、月経周期の変化などを組み合わせて判断する必要があります。
【セルフチェック】過多月経のサインは?血の塊・ナプキン・貧血に注目
経血量は自分で正確に測ることが難しく、他人と比較することもできません。そのため、医学的には出血量だけでなく、日常生活への影響や貧血の有無も重要な判断材料になります。
ナプキンが1時間もたない場合は要注意
次のような状態が続いている場合、過多月経の可能性があります。
- 昼間でも夜用ナプキンを使わなければ間に合わない。
- ナプキンが1〜2時間もたず、頻繁に交換する。
- 夜間に経血が漏れて、何度も起きる。
- 衣服や寝具を汚すことが増えた。
- 外出や仕事の予定を経血量に合わせて調整している。
厚生労働省の女性の健康に関する資料でも、ナプキンが1〜2時間もたないことや、昼間でも夜用ナプキンが必要になることは、専門医への受診を考える目安として紹介されています。
特にナプキンが1時間もたないほどの出血が繰り返される場合は、単なる体質として片づけず、早めに婦人科を受診してください。
レバー状の血の塊が頻繁に出る
生理中に血の塊が出ると、重大な病気ではないかと心配になる人もいるでしょう。
経血は通常、子宮から排出される過程で液状に保たれますが、出血量が多いと凝固した血液が塊として排出されることがあります。
一時的に小さな血の塊が出ることだけで病気と判断することはできません。ただし、レバーのような大きな血の塊、特に500円玉大以上のものが頻繁に出る場合は、過多月経のサインとして注意が必要です。
血の塊が増えたことに加えて、月経痛が強くなったり、生理期間が長くなったりしている場合は、子宮筋腫や子宮腺筋症などの検査を受けることをおすすめします。
見逃したくない鉄欠乏性貧血の症状
過多月経で特に注意したいのが、鉄欠乏性貧血です。
月経による出血が繰り返されると、体内の鉄分が失われます。鉄は赤血球中のヘモグロビンを作るために必要な成分です。不足すると十分な酸素を全身に運べなくなり、さまざまな不調につながります。
代表的な症状は次のとおりです。
- 立ち上がったときに立ちくらみがする。
- 階段を上るだけで息切れする。
- 以前より疲れやすくなった。
- 動悸や頭痛が起こる。
- 顔色が悪く、めまいを感じる。
- 集中力が続かず、日常生活に支障が出る。
注意したいのは、貧血がゆっくり進行すると、体が不調に慣れてしまう場合があることです。「40代だから疲れやすい」「更年期だから動悸がする」と思っていても、実際には過多月経による鉄欠乏性貧血が関係している可能性があります。
日本産婦人科医会の解説では、貧血の評価にヘモグロビンや赤血球の情報を用い、必要に応じて血清鉄やフェリチンなどを調べることが示されています。フェリチンは体内に蓄えられた鉄の状態を確認する指標です。
出血が多く、強いめまい、失神、息苦しさ、動悸などがある場合は、通常の予約受診を待たず、速やかに医療機関で診察を受けてください。意識が遠のくなど重い症状があれば救急対応が必要です。
閉経前に生理期間が長くなる場合も注意
経血量だけでなく、生理が何日続くかも重要なポイントです。
一般的な月経の持続期間は3〜7日程度とされています。以前は5日ほどで終わっていたのに、最近は8日以上続く、少量の出血が何日も止まらないという変化がある場合は、過長月経や異常子宮出血の可能性があります。
閉経移行期の排卵異常によって出血期間が長くなる場合もありますが、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどが原因となっているケースもあります。
特に月経と月経の間の出血、性交後の出血、長期間続く不規則な出血は、単純な更年期の変化と決めつけずに相談することが大切です。

【婦人科の検査】過多月経では何を調べる?経腟超音波検査と血液検査
婦人科では、出血量や月経周期についての問診を行い、必要に応じて内診、超音波検査、血液検査などを組み合わせて原因を調べます。
検査は全員に同じ内容が行われるわけではありません。年齢、症状、妊娠の可能性、既往歴、出血の状態などによって選択されます。
問診:いつから、どの程度増えたのかを確認
最初に確認されるのは、月経の変化です。
- 最後の月経が始まった日。
- 以前と比べた経血量の変化。
- 月経周期と出血が続く日数。
- 血の塊の有無や大きさ。
- 生理痛や下腹部痛の程度。
- 不正出血の有無。
- めまい、息切れ、動悸などの貧血症状。
- 服用している薬や過去の婦人科疾患。
診察前に月経アプリや手帳などで出血の記録を残しておくと、症状を説明しやすくなります。ナプキンの交換頻度や、血の塊が出た日も記録しておくと参考になります。
経腟超音波検査:子宮筋腫や子宮腺筋症を確認
経腟超音波検査は、膣から超音波プローブを挿入し、子宮や卵巣の状態を画像で確認する検査です。
主に次のような異常を調べるために使用されます。
- 子宮筋腫の有無、大きさ、位置。
- 子宮腺筋症を疑う所見。
- 子宮内膜の厚さや形状。
- 子宮内膜ポリープを疑う病変。
- 卵巣の異常や骨盤内の病変。
特に子宮腺筋症の診断では、経腟超音波検査が重要な役割を果たします。病変の範囲や状態によってはMRI検査が追加されることもあります。
血液検査:ヘモグロビンとフェリチンを確認
過多月経が疑われる場合、血液検査によって貧血の有無を確認します。
主な検査項目は以下のとおりです。
- ヘモグロビン:貧血の有無や程度を評価する。
- 赤血球数・赤血球指数:貧血の種類を見分ける参考にする。
- 血清フェリチン:体内の貯蔵鉄が不足していないか確認する。
- 血清鉄など:鉄の状態を詳しく調べる。
- 血液凝固検査:出血しやすい体質や凝固異常が疑われる場合に行う。
貧血が進んでいなくても、体内の貯蔵鉄が減少している場合があります。ヘモグロビンだけでは鉄不足を十分に評価できないこともあるため、症状や検査結果に応じてフェリチンなどを調べます。
子宮内膜検査・子宮鏡検査・MRI
超音波検査だけで原因が特定できない場合や、子宮内膜の病変が疑われる場合には、追加検査が検討されます。
子宮内膜ポリープが疑われる場合、日本産科婦人科学会の2023年版診療ガイドラインでは、経腟超音波検査を一次検査として行い、必要に応じて子宮鏡検査や組織検査を行う方法が示されています。
子宮鏡検査では、細い内視鏡を子宮内に挿入して、子宮内膜やポリープなどを直接観察します。必要に応じて病変の組織を採取することもあります。
また、子宮筋腫や子宮腺筋症の位置・広がりを詳しく確認したい場合にはMRIが選択されることがあります。
なお、40代の異常出血では、状況によって妊娠検査や子宮内膜組織検査なども必要になります。検査内容は症状に応じて医師が判断します。
(参考:日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」、日本産婦人科医会の2026年関連診療解説)
【治療方法】閉経前の過多月経はホルモン療法や鉄剤で改善できる?
過多月経の治療は、出血量を減らすことだけが目的ではありません。貧血を改善し、日常生活への影響を抑えながら、出血の原因となっている病気にも対処する必要があります。
治療方法は、子宮に病変があるかどうか、症状の重さ、年齢、妊娠希望、持病などを踏まえて決められます。
1.ホルモン療法で月経量をコントロールする
排卵異常などが原因で、子宮に明らかな器質的病変がない場合には、ホルモン療法が選択肢になります。
主な治療法には次のようなものがあります。
- プロゲスチン製剤:黄体ホルモンの作用によって子宮内膜の増殖を抑える。
- 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP):排卵や子宮内膜の状態を調整し、月経量を減らすことがある。
- 中用量ホルモン製剤:出血の状態に応じて止血や月経の調整を目的に使用される。
ただし、エストロゲンを含む薬剤は、血栓症のリスクや年齢、喫煙状況、持病などによって使用できない場合があります。40代では個別のリスク評価が重要です。
2.レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)
子宮内に装着するレボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)は、子宮内膜に黄体ホルモンを持続的に作用させる治療法です。
子宮内膜の増殖を抑えることで経血量の減少が期待できます。過多月経の治療に用いられ、避妊効果もあります。
ただし、子宮筋腫の位置や子宮の形状などによっては装着が適さない場合があります。特に子宮内腔を大きく変形させる筋腫がある場合には慎重な判断が必要です。
3.抗線溶薬などで出血量を抑える
トラネキサム酸は、血液中のフィブリンが分解される働きを抑える抗線溶薬です。月経中の出血量を減らす目的で使用されることがあります。
ホルモン療法が適さない場合や、症状に応じて薬物療法の選択肢になります。ただし、血栓症のリスクや併用薬などを考慮する必要があるため、医師の判断に従って使用します。
4.鉄剤で鉄欠乏性貧血を改善する
過多月経によって鉄欠乏性貧血になっている場合には、鉄剤による治療が検討されます。
鉄剤には内服薬と注射薬があり、貧血の程度や吸収状態、服用できるかどうかなどによって使い分けられます。
ただし、鉄剤を飲むだけでは出血の原因は解決しません。子宮筋腫や子宮腺筋症が原因なら、出血を抑える治療も並行して検討する必要があります。
また、貧血が改善しても体内の貯蔵鉄が十分に回復していないことがあります。自己判断で服用を中止せず、血液検査で経過を確認しましょう。
5.手術などの治療が検討されるケース
薬物療法で十分な改善が得られない場合や、子宮に病変があり症状が強い場合には、手術などが検討されます。
- 子宮鏡下手術:子宮内膜ポリープや子宮内腔に突出する筋腫を切除する。
- 子宮筋腫核出術:子宮を残しながら筋腫を取り除く。
- 子宮動脈塞栓術:子宮筋腫などへの血流を減らす治療法。
- 子宮内膜アブレーション:子宮内膜を処置して月経出血を減らす治療法。
- 子宮全摘術:子宮を摘出し、子宮からの出血を根本的になくす方法。
これらはすべての人に適しているわけではありません。特に妊娠を希望する場合は、治療後の妊娠への影響を十分に検討する必要があります。
日本産婦人科医会の子宮腺筋症に関する解説でも、薬物療法を基本としながら、症状の重さや妊娠希望を踏まえて外科的治療を検討する考え方が示されています。
更年期のホルモン補充療法(HRT)とは別に考える
混同しやすいのが、過多月経に対するホルモン療法と、更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)です。
HRTは、主に更年期のエストロゲン低下によるほてり、発汗などの症状を改善する目的で行われます。一方、過多月経に対するホルモン療法は、子宮内膜や排卵を調整して出血を抑えることが目的です。
治療の目的や使用する薬剤は異なります。更年期症状と過多月経が同時にある場合でも、それぞれの症状や子宮の状態を確認したうえで治療方針を決めます。

【受診の判断基準】閉経前の生理量が多いとき、婦人科に行くべきタイミング
過多月経は、日常生活に支障が出てから初めて深刻さに気づくケースもあります。受診を迷ったときは、出血量だけでなく、出血の変化と体調を合わせて判断しましょう。
早めに婦人科を受診したい症状
- 以前と比べて明らかに経血量が増えた。
- ナプキンが1〜2時間もたない。
- 500円玉大以上の血の塊が頻繁に出る。
- 生理が8日以上続くことが繰り返される。
- 月経以外のタイミングで出血する。
- 生理痛や下腹部痛が以前より強くなった。
- 立ちくらみ、動悸、息切れなどがある。
特に出血量が増えた状態が何周期も続く場合は、貧血が進行している可能性があります。症状が軽く感じられても、一度検査を受けておくと安心です。
大量出血や強い貧血症状がある場合は急いで受診
次のような症状がある場合は、通常の婦人科予約を待たずに、当日中の医療機関への相談や救急受診を検討してください。
- 大量の出血が続き、ナプキンが短時間でいっぱいになる。
- 強いめまいや失神がある。
- 息苦しさや激しい動悸がある。
- 冷や汗、顔面蒼白、立っていられないほどの脱力感がある。
- 妊娠の可能性があり、出血や強い腹痛がある。
出血に伴う循環不全や妊娠関連の異常など、迅速な対応が必要な状態が隠れている可能性があります。意識障害や失神などの重い症状がある場合は救急車を呼ぶことも検討してください。
受診前に記録しておくと役立つこと
婦人科では、普段の月経と比べて何が変わったのかが診断の手がかりになります。
- 生理が始まった日と終わった日。
- ナプキンを交換した回数と頻度。
- 血の塊が出た日と大きさ。
- 生理痛や下腹部痛の有無。
- めまい、息切れ、動悸などの症状。
- 服用している薬やサプリメント。
内診や経腟超音波検査に不安がある場合は、予約時や診察時に相談できます。妊娠希望の有無や、子宮を残したいという希望も、治療方法を選ぶうえで重要な情報です。
【よくある誤解】閉経前の生理量が多いときに知っておきたいこと
生理量が増えたら閉経が近い証拠?
必ずしもそうではありません。閉経移行期には排卵異常によって月経量が増えることがありますが、子宮筋腫や子宮腺筋症などでも同様の症状が起こります。経血量の増加だけで閉経時期を予測することはできません。
40代なら生理の量が増えても普通?
40代はホルモンや排卵の状態が変化しやすい年代ですが、生活に支障が出るほどの出血は正常な加齢変化として片づけないことが大切です。貧血や子宮の病気が隠れている可能性があります。
血の塊が出るのは必ず病気?
血の塊が一度出ただけで、必ず病気があるとは限りません。ただし、大きな塊が何度も出る、経血量が増えた、強い生理痛があるなどの変化が重なっている場合は検査が必要です。
生理が不規則ならホルモン検査だけで原因が分かる?
ホルモン検査だけでは過多月経の原因を特定できない場合があります。閉経移行期はホルモン値自体が大きく変動するため、FSHなどの数値だけで治療方針を決めることは適切ではありません。月経の経過や超音波検査、貧血の評価などを組み合わせて判断します。
また、閉経移行期の出血であっても、子宮筋腫や内膜の病変などを除外する必要があります。
【閉経前の生理量が多い】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:閉経前になると生理の量が急に増えることはありますか?
A1:あります。閉経移行期には卵巣機能が低下し、排卵が不規則になることで、子宮内膜が不安定になり出血量が増える場合があります。ただし、子宮筋腫や子宮腺筋症なども原因になるため、急な変化があれば婦人科で確認してください。
Q2:40代で生理の血の塊が増えたら病院に行くべきですか?
A2:大きな血の塊が頻繁に出る場合や、経血量の増加、長引く出血、強い生理痛などを伴う場合は受診をおすすめします。特に500円玉大以上の塊が繰り返し出る場合は注意が必要です。
Q3:生理が長く続くのは閉経が近いからですか?
A3:閉経移行期の排卵異常によって出血期間が長くなる場合があります。しかし、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜の病変なども考えられます。以前より出血が長引く状態が続くなら検査を受けましょう。
Q4:過多月経は血液検査だけで分かりますか?
A4:血液検査では貧血や鉄不足の程度を確認できますが、子宮筋腫や子宮腺筋症などの原因を特定するには超音波検査などが必要です。症状によって子宮鏡検査や子宮内膜の組織検査も行われます。
Q5:閉経前の過多月経は治療できますか?
A5:治療できます。原因や症状に応じて、ホルモン療法、LNG-IUS、トラネキサム酸、鉄剤などが使用されます。子宮筋腫やポリープなどが原因の場合は、手術を含む治療が検討されることもあります。
Q6:生理量が多くても貧血にならないことはありますか?
A6:あります。経血量が多くても、すぐにヘモグロビン値が低下するとは限りません。一方、貧血の診断基準を満たす前から体内の貯蔵鉄が不足していることもあります。症状が気になる場合は、血液検査で確認することが大切です。
まとめ:閉経前の生理量が多いときは年齢だけで判断しない
閉経前の生理量が増える背景には、卵巣機能の低下に伴う排卵異常やホルモンバランスの変化が関係していることがあります。特に40代は月経周期や出血期間が変化しやすく、更年期に伴う自然な変化として現れる場合もあります。
しかし、過多月経の原因はそれだけではありません。子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症など、検査によって確認する必要がある病気もあります。
ナプキンが1〜2時間もたない、レバー状の血の塊が頻繁に出る、生理が長く続く、めまいや動悸、息切れがある場合は、婦人科への相談を検討してください。
診察では、経腟超音波検査や血液検査などを通じて原因と貧血の有無を調べ、必要に応じてホルモン療法や鉄剤、手術などが選択されます。
大切なのは、「もうすぐ閉経するから仕方がない」と我慢しないことです。月経の変化は体からの重要なサインです。出血量や期間の変化を記録し、早めに原因を確認することが、貧血の予防や適切な治療につながります。
【参考にした主な公的資料・専門機関】 (出典: 閉経 前 の 生理 量 が 多い(Yahoo!ニュース))
- 厚生労働省「女性特有の健康課題に関する資料・過多月経症」
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2026」(2026年4月発行)
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」
- 日本産婦人科医会「排卵異常」「過多月経への対応」「過多月経を有する子宮腺筋症の取り扱い」
- 日本婦人科腫瘍学会「子宮筋腫」
- 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS「月経異常・排卵障害に関連する代表的な病気」
- 今日の臨床サポート「過多月経」(2026年9月30日監修レビュー)