【展示内容を解説】39人の当事者が写真・手記・体験談で伝えた性搾取の現実
展示の中心にあるのは、性的搾取を経験した女性たち自身が制作した写真、文章、日記、手記、絵画、メッセージなどの作品です。Colabo公式サイトによると、14~26歳の39人のメンバーが企画に関わり、それぞれの経験や伝えたい思いを作品にしました。

ここでいう39人は、展示活動に関わったメンバーの累計的な参加規模を示す数字です。2016年の初回展示について、当時の仁藤夢乃氏の寄稿では24人が参加したと記録されています。初回の参加者数と、その後の企画全体の参加者数を混同しないことが大切です。
1. 当事者の写真が伝える被害の背景
写真作品は、単に被害の瞬間を再現するものではありません。家庭に居場所がなかったときの孤独、安心できる場所を探していたときの不安、性的搾取に巻き込まれる過程など、本人の記憶や感情を表現しています。
生活ニュースコモンズが2025年3月に掲載した展示紹介記事では、ラブホテルの廊下を写した写真が紹介されています。買春被害を経験した当事者にとって、その場所は過去の恐怖や緊張を思い起こさせるものだったといいます。
また、観光案内のアルバイトだと説明されてJKビジネスに関わり、性的被害に遭った少女の気持ちを表現した写真もあります。こうした作品から見えてくるのは、被害が必ずしも本人の自由な選択や遊興目的から始まるわけではないという現実です。
2. 「大人に伝えたいこと」に込められた声
展示の中でも印象的なのが、「大人に言われて嫌だったこと」をテーマにした作品です。
生活ニュースコモンズの取材記事によると、この作品は高校生の当事者の発案から生まれました。全国の少女たちに呼びかけて集めた言葉には、親からの言葉だけでなく、教員、児童福祉関係者、警察、医療関係者などから言われた言葉も含まれていました。
作品の中央には「産まなきゃよかった」という言葉が大きく記されています。制作過程では、参加者たちが絵の具やペンで言葉を重ね、手形も加えていったと報じられています。
この作品が問いかけるのは、家庭だけでなく、子どもを守る役割を担う大人の言動も、当事者を追い詰める要因になり得るという問題です。
3. 手記・日記に描かれた虐待、貧困、孤立
手記や日記には、家庭内暴力、親からの虐待、学校でのいじめ、住居の不安定さ、経済的困窮など、性搾取に至るまでの複雑な背景が記されています。
例えば、食事を十分に取れず、コンビニの廃棄品を食べながら生活していた少女の日記も紹介されています。食事の写真をノートに貼り、自分の気持ちを書き込んだ作品です。生活ニュースコモンズの記事では、写真のコピーに失敗して泣いていた少女が、失敗した写真をそのまま貼り付けたエピソードも伝えられています。
こうした展示は、貧困を単に収入の問題として扱っていません。食事、住まい、安心できる人間関係、助けを求められる場所が不足することによって、少女たちの選択肢が狭まっていく構造を示しています。
なお、展示作品には性的虐待や性暴力など、精神的な負担を伴う内容が含まれます。来場者は、すべての作品を無理に読み進める必要はありません。
【開催経緯と目的】仁藤夢乃が企画した理由は「売春」のイメージを変えること
企画の出発点は、2015年9月に仁藤夢乃氏が大学の授業で投げかけた質問でした。
質問は「売春する中・高校生について、どんなイメージを持っていますか?」というもの。学生から返ってきたのは、遊ぶお金が欲しい、快楽のため、愛情を求めている、友人に誘われたといったイメージでした。
しかし、その授業には、家庭や学校で暴力や性的虐待、いじめを経験し、居場所を失った当事者も同行していました。仁藤氏は、学生たちの抱くイメージと、支援活動を通じて出会ってきた少女たちの実態との大きな隔たりを感じたと、2016年のイミダスへの寄稿で説明しています。
なぜ「売られた」ではなく「買われた」なのか
展示名は、企画について話し合う中で出た、ある当事者の言葉に由来します。
「売ったというより、買われたという感覚だった」
この言葉には、性売買の経験を本人の自己責任や主体的な選択だけで説明することへの違和感が表れています。
当事者が経験したことを「売った」と表現すると、少女側が自発的に行動したという印象が強くなりがちです。一方、「買われた」という表現には、金銭を介して性的な行為を求めた側の存在と、その力関係を問い直す視点があります。
展示が伝えようとしているのは、少女たちの行動だけを取り上げるのではなく、なぜその状況に置かれたのか、誰が利益を得たのか、周囲の大人は何をしていたのかという問題です。
開催までの準備は約10か月
仁藤氏の2016年の寄稿によると、作品制作や準備は2015年10月ごろから始まり、2016年7月まで続きました。
参加者全員に同じ形で参加を求めたわけではありません。精神状態や生活環境、居住地、入院など、それぞれの事情に応じて、ミーティングや合宿への参加方法を調整していました。
当初は18~20歳前後のメンバーが中心でしたが、企画を知った14~15歳の中学生も参加を希望しました。こうして、当事者自身が発信する展示として形になっていきました。
つまり、仁藤氏が一方的に少女たちの体験を展示する企画ではなく、当事者たちが何を伝えたいかを考え、表現方法をつくっていった点に特徴があります。
【開催実績と年表】全国26か所・93日間・来場者13,191人の軌跡
「私たちは『買われた』展」は、2016年の東京開催を出発点として、各地の団体や大学などが主催する形で広がりました。
Colabo公式サイトが公表する2025年3月までの累計実績は、開催26か所、開催93日間、来場者13,191人です。
開催の主な転換点
| 時期 | 出来事 | 実績・内容 |
|---|---|---|
| 2015年9月 | 企画のきっかけ | 仁藤夢乃氏が大学の授業で社会のイメージと当事者の経験の隔たりを実感 |
| 2015年10月~2016年7月 | 作品制作 | 当事者が写真や手記、メッセージなどを制作 |
| 2016年8月11~21日 | 東京で初開催 | 24人が参加、来場者2,975人 |
| 2016年以降 | 全国各地へ展開 | Colaboによる展示パネルの貸し出しを通じて開催地が拡大 |
| 2023年度末 | 累計実績 | 来場者12,752人 |
| 2025年3月22~23日 | 一橋大学で開催 | 100点以上の作品を展示 |
| 2025年3月まで | 公式累計 | 26か所、93日間、13,191人 |
2016年の初回展示は、東京都内の神楽坂セッションハウスで11日間にわたって開催されました。仁藤氏の当時の寄稿によると、来場者は延べ2,975人。最終日には入場まで約2時間半待ちとなるほどの反響がありました。
その後、Colaboが展示パネルを各地の開催団体に貸し出す方式で、全国に広がっていきます。2023年度末時点では来場者12,752人だったことが2025年の報道で紹介されており、公式サイトでは2025年3月までの累計が13,191人に更新されています。
どの地域で開催されたのか
Colaboの公式発表には、次の地域が開催地域として掲載されています。
- 北海道・東北:北海道、岩手県、宮城県
- 関東:栃木県、千葉県、東京都、神奈川県
- 北陸・中部:静岡県、愛知県
- 近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県
- 中国・四国:島根県、岡山県、広島県、徳島県
- 九州・沖縄:沖縄県
- 海外:韓国、台湾
ここで注意したいのは、26か所という数字は開催場所の累計であり、26都道府県を意味するわけではないことです。また、地域一覧と開催回数も別の指標です。
これらの数字から分かるのは、特定の都市や団体だけに依存せず、地域の主催者が展示を受け継ぐ仕組みができていることです。
【関係者と役割】Colabo・仁藤夢乃・当事者・開催団体の関係を整理
この展示を理解するには、企画を支える団体、当事者、開催地の主催者を区別する必要があります。それぞれの立場は同じではありません。
Colaboと仁藤夢乃の役割
代表の
一方、展示の主役は仁藤氏ではありません。作品を制作し、自らの経験を伝える当事者たちです。仁藤氏とColaboは、彼女たちが発信するための環境や活動基盤を支える立場にあります。
2025年の一橋大学開催は誰が主催した?
2025年3月22日と23日に行われた一橋大学での展示は、「私たちは『買われた』展」一橋大学実行委員会が主催しました。Colaboが単独で主催したイベントではありません。
同実行委員会は、ジェンダー論、朝鮮近現代史、社会福祉などを学ぶ大学生・大学院生で構成されていました。一橋大学大学院社会学研究科の平和と和解の研究センターが共催し、上野千鶴子基金が後援しています。
展示では100点以上の作品に加え、性売買の歴史を扱う特別パネルも予定されていました。仁藤氏の講演や、日韓の性売買サバイバーと女性運動をテーマにした企画も組まれています。
この開催事例は、展示が若年女性支援団体の活動紹介にとどまらず、大学の教育・研究の場で性搾取を考える教材としても受け止められていることを示しています。
【来場者の感想・評判】展示が伝えたものと社会に残した課題
Colabo公式サイトには、展示を見た人の感想が掲載されています。そこには、少女たちの経験に衝撃を受けたという声だけでなく、自分自身の過去と重ね合わせた感想もあります。
来場者の感想から見える3つの反応
1. 被害の背景に対する理解
手記を読んだ後、記載された年齢に驚き、まだ幼い少女たちが自分で何とかしなければならない状況に置かれていることに心を痛めたという感想が紹介されています。
2. 自分自身の経験との重なり
過去に虐待を受けた経験のある来場者が、展示された手記に自分の感情を重ね、涙が出たという感想もあります。性的搾取を直接経験していない人にも、家庭内の暴力や孤立という共通する問題が伝わったことが分かります。
3. 社会全体の責任への気づき
困っている少女に声をかけるのが性的な目的を持つ男性だけだったと知り、支援の不足に気づいたという感想も掲載されています。被害を防ぐ責任は、本人や家族だけでなく、社会の側にもあるという認識につながっています。
展示の評価をどう読み取るべきか
来場者の感想は、展示を見た人が何を感じ、どのような問題意識を持ったかを知るための重要な資料です。ただし、公式サイトに掲載された感想だけで、すべての来場者の評価や世論全体を代表することはできません。
13,191人という数字も、累計来場者数であって、展示に賛成した人の数や、性搾取に関する意識が変化した人の数ではありません。
評価する際には、来場者数、開催地域、作品の内容、来場者の感想をそれぞれ分けて見る必要があります。
ネット上で誤解されやすいポイント
この展示をめぐっては、数字や企画の主体について混同しやすい点があります。
- 「参加者は24人なのか39人なのか」:2016年の初回展示は24人。公式サイトに掲載されている39人は企画全体に関わったメンバーの規模であり、異なる時点の数字です。
- 「13,191人は2025年3月の展示だけの来場者数なのか」:違います。2016年8月から2025年3月までの累計です。
- 「開催26か所は26都道府県なのか」:違います。公式発表は開催か所数を示しています。
- 「Colaboだけが各地の展示を主催しているのか」:違います。パネルを借り受けた地域団体や大学などが主催する形式もあります。
また、Colaboという団体をめぐる別の政治的・社会的議論と、この展示に掲載された当事者の証言や開催実績は、論点を分けて検討する必要があります。団体への評価だけで展示内容を一括して判断したり、逆に展示の目的だけで団体のすべての活動を評価したりするのは適切ではありません。
展示そのものを評価するなら、作品の制作主体、公開された内容、開催記録、主催者の説明を確認することが判断の基本になります。
【2026年最新】私たちは「買われた」展の現在とパネル貸し出し
2026年11月現在、Colabo公式の展示紹介ページには、2025年3月までの累計実績として26か所、93日間、13,191人という数字が掲載されています。
また、同ページでは、各地で企画展を開催したい団体に向けて、展示パネルの貸し出しを案内しています。つまり、展示の仕組み自体は、過去の開催実績を紹介するだけのものではなく、地域で新たな開催を希望する団体に開かれています。
展示パネルはどのように貸し出される?
基本的な仕組みは、Colaboが保有する展示パネルを、開催を希望する個人や団体に貸し出し、借り受けた側が会場や開催日程を調整して企画展を運営するというものです。
2022年12月にColaboが公表した説明資料でも、各地の開催希望者にパネルを貸し出して実施する方式が説明されています。2025年の一橋大学開催も、地域や大学側が主体となって企画する形の具体例です。
2026年に開催予定はある?
2026年11月時点で確認できるColabo公式の展示紹介ページには、2026年の個別開催日程や会場一覧は掲載されていません。
そのため、2026年に特定の都市で開催される、あるいは開催が終了したといった情報を、公式ページの累計実績だけから判断することはできません。
現在の開催予定を知りたい場合は、Colaboの公式問い合わせ窓口で「展示会パネルの貸出について」を選択し、開催希望地域や時期を伝えて確認する方法があります。
地域の学校、大学、自治体、NPO、女性支援団体などが企画を検討する場合も、パネル貸し出しについて問い合わせることができます。
【プロの結論】「私たちは『買われた』展」が問いかける本当の問題
この展示の本質は、性搾取を経験した少女たちの悲惨な体験を紹介することだけではありません。被害が起きる前の生活環境、家庭や学校での孤立、相談先の不足、そして性的な要求をする側の存在まで、問題を一連の構造として捉え直すことにあります。
とりわけ注目すべきなのは、当事者が単に支援される対象としてではなく、自分の経験を社会に伝える発信者として企画に参加していることです。写真や手記を制作する行為は、これまで周囲に理解されなかった経験を、自分自身の言葉や表現で伝える機会にもなっています。
また、展示が各地に広がった背景には、パネルを貸し出す仕組みがあります。Colaboだけが開催を続けるのではなく、大学や地域団体が自分たちの問題意識に基づいて企画できることは、活動の継続性という点で重要です。
一方、13,191人という来場者数だけで、性搾取の問題がどれほど改善したかを判断することはできません。展示の先に求められるのは、虐待や貧困に苦しむ子どもが安心して相談できる環境、食事や住まいを確保できる支援、被害を受けた人を責めない社会の仕組みです。
展示を訪れる人にとっても、作品を見て終わりにするのではなく、自分の周囲にいる困難を抱えた人にどのような支援ができるのか、また、性搾取を生み出す社会の構造にどう向き合うのかを考えることが、次の一歩になります。
【私たちは「買われた」展】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:私たちは「買われた」展とは何ですか?
A1:Colaboと、Colaboにつながる若年女性の当事者が企画したパネル展示です。児童買春や性搾取の実態を伝えるため、写真、体験談、手記、日記、メッセージなどを展示しています。
Q2:展示に参加した当事者は何人ですか?
A2:Colabo公式サイトでは、14~26歳の39人のメンバーが作品制作に関わったと紹介されています。なお、2016年の初回展示では24人が参加しており、両者は異なる時点の数字です。
Q3:開催実績と来場者数はどれくらいですか?
A3:Colabo公式発表によると、2016年8月から2025年3月までに26か所、93日間開催され、累計来場者は13,191人です。
Q4:2026年も開催されていますか?
A4:2026年11月時点で、公式の展示紹介ページに掲載された累計実績は2025年3月までです。2026年の個別開催日程は同ページでは確認できません。一方、展示パネルの貸し出し案内は継続して掲載されています。
Q5:展示パネルを借りて地元で開催できますか?
A5:可能です。Colabo公式サイトでは、各地で企画展を開催したい団体を募集しています。問い合わせ窓口で展示会パネルの貸し出しについて相談できます。
Q6:展示ではどのような問題が取り上げられていますか?
A6:児童買春、少女への性搾取、家庭内暴力、虐待、貧困、孤立、学校や福祉機関などへの相談時の問題などです。被害そのものだけでなく、そこに至る背景や周囲の大人の責任も扱っています。
まとめ:私たちは「買われた」展の実績と今後の注目点
「私たちは『買われた』展」は、Colaboと当事者の女性たちが、児童買春や性搾取の現実を社会に伝えるために始めた企画展です。
2016年の東京での初開催から、全国各地や海外に広がり、2025年3月までに26か所、93日間、累計13,191人が来場しました。14~26歳の39人が関わった写真や手記、体験談は、虐待や貧困、孤立など、性搾取の背景にある問題を可視化しています。
2026年現在も公式ページでは展示パネルの貸し出しが案内されており、地域の団体による新たな開催につながる仕組みが残されています。
この展示を理解するうえで大切なのは、被害を経験した少女たちだけに責任を負わせないこと、そして「なぜその状況が生まれたのか」「買う側や周囲の大人に何ができたのか」という問いを持ち続けることです。
13,191人という数字の向こう側にあるのは、一人ひとりの経験と、声を上げる機会を求める人々の存在です。展示が伝えるメッセージを、実際の支援や社会の仕組みを考えるきっかけにつなげることが求められています。
主な参照資料:Colabo公式「私たちは『買われた』展」、仁藤夢乃氏によるイミダス2016年寄稿、生活ニュースコモンズ2025年3月1日付取材記事、一橋大学大学院社会学研究科のイベント記録、ウィメンズアクションネットワークの開催案内。 (出典: 私 たち は 買 われ た 展(Yahoo!ニュース))