アイコスに発がん性はある?2026年最新研究とFDA判断を徹底解説
「アイコス(IQOS)は紙巻きたばこより有害物質が少ないから、発がん性もほとんどないのでは?」。そんな疑問に対し、2026年に公表された厚生労働省の研究報告は、慎重に受け止めるべき結果を示した。加熱式たばこには発がん性が懸念される物質が含まれており、紙巻きたばこより濃度が低い物質が多い一方、一部では同等または高い濃度が確認されている。
特に注目されるのが、2025年度の厚生労働科学研究である。研究班は、加熱式たばこの発がん性について、がんの発症を直接評価した疫学研究が存在しないため、現時点では判定できないと結論づけた。ただし、これは発がん性がないという意味ではない。2026年4月の米国FDAによるIQOSの曝露低減に関する認可更新も含め、科学的に確認されていることと、まだ分かっていないことを整理する必要がある。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 発がん性:アイコスから発がん性が懸念される物質が検出されており、安全とはいえない。
- 2025年度の厚労科研:がん発症を評価する疫学データが不足しており、発がんリスクは現時点で判定できない。
- 紙巻きたばことの違い:有害物質の多くは減少するものの、一部の物質は高濃度で、健康リスクがなくなるわけではない。
- FDAの2026年判断:認められたのは特定製品の有害物質への曝露低減表示であり、安全性や発がんリスク低減の保証ではない。
- 受動喫煙:アイコスのエアロゾルにも有害物質が含まれ、周囲の人への曝露も確認されている。
【2026年最新結論】アイコスに発がん性はある?ないのかを科学的に検証
まず、最も気になる疑問に答えたい。アイコスに発がん性がないと証明された事実はない。むしろ、発がん性が懸念される化学物質への曝露が確認されている。
アイコスは、たばこの葉を燃やすのではなく、電気によって加熱してエアロゾルを発生させる加熱式たばこだ。燃焼を伴わないため、紙巻きたばこと比較して一酸化炭素などの燃焼由来物質が少なくなるという特徴がある。
しかし、燃焼しないことと、有害物質が発生しないことは同じではない。たばこ葉に含まれる成分や加熱によって生じる化学物質が、吸入するエアロゾルに含まれるためだ。
2026年5月公表の厚労科研が示した重要な結論
大きな転機となったのが、国立保健医療科学院の牛山明氏を研究代表者とする「加熱式たばこの化学的特性と健康リスクに関する科学的エビデンス構築に係る研究」である。
この研究は2025年度の厚生労働科学特別研究事業として実施され、2026年5月21日に厚生労働科学研究成果データベースで報告書が公開された。
研究班は2010年から2025年12月22日までの国内外の文献を調査。英文1,132報、邦文58報をスクリーニング対象として、加熱式たばこの化学的特性や能動喫煙・受動喫煙による健康影響を検討した。
その結果、がんの発症そのものを評価した疫学研究が存在しないため、発がん性については判定できないとされた。一方、発がんリスクを懸念させる化学物質や曝露に関する知見も確認されている。
「発がん性については、がんの発症をエンドポイントとした疫学研究が存在しないため、現時点では判定できない」
出典:厚生労働科学研究「加熱式たばこの化学的特性と健康リスクに関する科学的エビデンス構築に係る研究」総括研究報告書
ここで重要なのは、「判定できない」と「発がん性がない」は全く異なる意味だということだ。研究でがんの発症率に関する確かな結論が出ていない以上、発がんリスクが低いと断言することもできない。
「発がん性が確認されていない」という情報の落とし穴
インターネット上では、アイコスについて「発がん性は証明されていないから問題ない」という説明を見かけることがある。しかし、これは科学的な判断を単純化しすぎている。
発がん性の評価には、化学物質の分析、細胞や動物を用いた実験、ヒトの曝露バイオマーカー、長期間の疫学調査など、複数の段階がある。
有害物質が検出されても、直ちに使用者のがん発症率が何倍になるとはいえない。一方、長期的な疫学データが不足しているからといって、物質の有害性まで否定されるわけでもない。
2026年時点での正確な理解は、アイコスの発がんリスクは否定されておらず、実際の発症リスクの大きさはまだ確定していないというものだ。

【有害物質の正体】アイコスに含まれる発がん性物質と健康リスク
アイコスのエアロゾルには、ニコチンだけでなく、発がん性や呼吸器への悪影響が懸念される複数の化学物質が含まれる。
厚生労働省の2025年度研究では、加熱式たばこの有害物質を分析し、発がん影響と非発がん影響の両面から初期リスク評価を実施した。
特に注意したい代表的な化学物質
1.NNK(たばこ特異的ニトロソアミン)
NNKは、たばこ製品に関連する代表的な発がん性物質の一つで、肺がんとの関連が問題視されている。国際がん研究機関(IARC)の発がん性分類ではグループ1に分類される。
厚労科研の初期リスク評価でも、NNKによる肺がんリスクが懸念される結果となった。
2.NNN(N-ニトロソノルニコチン)
NNNもたばこ特異的ニトロソアミンの一種で、発がん性が確認されている物質だ。特に上気道腫瘍との関連が懸念されており、同研究の初期リスク評価でも取り上げられた。
3.ベンゾ[a]ピレン
ベンゾ[a]ピレンは多環芳香族炭化水素(PAH)に分類される発がん性物質である。燃焼によって発生することで知られるが、加熱式たばこについても検出や曝露の評価対象となっている。
厚労科研では、この物質による肺がんリスクが懸念されると評価された。
4.アセトアルデヒド
アセトアルデヒドは、加熱式たばこのエアロゾルにも含まれるカルボニル化合物だ。発がん性に加えて、呼吸器などへの刺激性も問題となる。
2025年度研究では、一部物質について安全閾値を超える可能性が指摘されている。
5.アクロレイン
アクロレインは強い刺激性を持つ化学物質で、気道や肺への悪影響が懸念される。厚労科研の初期リスク評価では、気道への影響が懸念される物質として挙げられた。
6.アクリルアミド
アクリルアミドは発がん性が懸念される化学物質で、加熱式たばこの分析でも注目されている。厚労科研の総括報告書では、製品の組み合わせによっては紙巻きたばこを上回る発生量となる物質の一つとして紹介された。
7.フルフラール
フルフラールは加熱によって生じる化学物質で、厚労科研では気道への影響が懸念される物質として評価されている。紙巻きたばこより高濃度となる場合がある点も注目される。
8.ニコチン
ニコチンは依存性の高い物質であり、発がん性物質そのものと混同しないことが大切だ。がんとの直接的な因果関係を示す代表的な発がん性物質とは異なるが、心血管系への影響や依存形成など、別の健康リスクがある。
アイコスに切り替えたとしても、ニコチン依存が解消されるわけではない。
有害物質は少なくてもゼロにはならない
上記のほか、ホルムアルデヒド、ベンゼン、1,3-ブタジエン、プロピレングリコール、グリセロールなども、加熱式たばこの化学的特性を評価する際に調査される成分である。
世界保健機関(WHO)が重視する代表的な有害物質の枠組みには、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、ベンゼン、一酸化炭素、ベンゾ[a]ピレン、NNK、NNNなどが含まれる。
さらに、2026年に公表されたIQOSエアロゾルの系統的レビューでは、従来の評価対象だけでは捉えきれないフェノール類、金属類、加熱によって生じる副生成物なども検討対象となっている。
つまり、アイコスの安全性を評価するには、単純に発がん性物質の数を数えるだけでは不十分だ。物質ごとの毒性、濃度、吸入量、使用期間を総合的に考える必要がある。
【徹底比較】アイコスと紙巻きたばこの発がん性はどちらが高い?
アイコスと紙巻きたばこを比較すると、燃焼を伴わないアイコスでは、多くの燃焼由来有害物質の発生量が減少する傾向がある。
ただし、ここで注意したいのは、有害物質への曝露が減ることと、がんになる確率が同じ割合で減ることは別の話だという点だ。
厚労科研の2025年度研究では、たばこ産業が主張する「有害物質90%以上削減」という数値についても、その比較条件が検討された。
この数値は、実験用の標準紙巻きたばことの排出量比較に基づく。一方、実際に使用する人の尿中バイオマーカーでは、紙巻きたばこと比較した低減幅は約半分程度にとどまるという結果が報告されている。
アイコスと紙巻きたばこの比較表
| 比較項目 | アイコス・加熱式たばこ | 紙巻きたばこ | 評価のポイント |
|---|---|---|---|
| 加熱方法 | 電気でたばこ葉を加熱 | たばこ葉を燃焼 | 燃焼由来物質の発生に違いがある |
| 一酸化炭素 | 大幅に低減 | 燃焼により発生 | アイコスで減少する代表的な物質 |
| NNK・NNN | 検出される | 含まれる | 発がん性が懸念される物質は残る |
| ベンゾ[a]ピレン | 検出・曝露評価の対象 | 燃焼によって発生 | 肺がんとの関連が懸念される |
| アセトアルデヒド | 発生量は低い傾向だが残存 | 燃焼によって発生 | 加熱式でも曝露を避けられない |
| フルフラール | 紙巻きより高濃度となる場合がある | 製品や条件により異なる | 加熱式特有の化学的特性に注意 |
| ニコチン曝露 | 紙巻きと同等となる場合がある | ニコチンを含む | 依存性は解消されない |
| 尿中NNAL | 紙巻きの約半分程度 | 比較基準となる | 発がん関連物質への曝露低減を示す指標 |
| がん発症リスク | 長期的な疫学データが不足 | 肺がんなどとの因果関係が確立 | 実際の発症率を直接比較できない |
※比較は厚生労働科学研究の総括報告書などに基づく。製品の世代、たばこスティック、測定条件、吸引方法によって数値は変化する。また、加熱式たばこ全体の研究結果が、そのまま全世代のIQOS製品に当てはまるわけではない。
紙巻きたばこより有害性が低いなら安心なのか
必ずしもそうではない。
紙巻きたばこは、肺がんをはじめとする複数のがんとの因果関係が確立している。一方、加熱式たばこは長期的な疫学データが不足しているため、現時点で両者の発がんリスクを正確な数値で比較することはできない。
ただし、完全に紙巻きたばこから加熱式たばこへ切り替えた人について、複数の発がん性物質の曝露バイオマーカーが低下するという研究結果は存在する。
2025年に公表されたシステマティックレビューとメタ解析では、加熱式たばこへ完全に切り替えた人において、紙巻きたばこを継続する人よりも複数の発がん性物質への曝露指標が低かった。
ただし、対象となった研究の多くは5〜7日程度の短期間の試験であり、数十年後のがん発症リスクを証明するものではない。
したがって、「紙巻きたばこより曝露が減る場合がある」という評価は可能でも、「アイコスならがんにならない」という結論にはつながらない。

【FDAの2026年判断】IQOSの曝露低減認可は安全性の証明なのか
2026年4月17日、米国食品医薬品局(FDA)はIQOS関連の5製品について、曝露低減に関する修正リスクたばこ製品(MRTP)の認可を更新した。
この判断は、IQOSの発がん性を否定するものではない。むしろ、何を認めたのかを正確に理解することが重要になる。
2026年4月17日にFDAが更新した認可の内容
FDAが更新したのは、IQOS 2.4およびIQOS 3.0のデバイスと、3種類のたばこスティックに関する曝露低減表示の認可である。
認められた表示の趣旨は次の3点だ。
- IQOSはたばこを燃焼させずに加熱する。
- その仕組みによって、有害または有害となる可能性のある化学物質の発生量が大幅に減少する。
- 紙巻きたばこからIQOSに完全に切り替えた場合、身体が有害化学物質に曝露される量が大幅に減少することが研究で示されている。
対象はIQOS 2.4、IQOS 3.0と、Marlboro Amber、Green Menthol、Blue Mentholの各HeatSticks製品である。
ここで注目すべきなのは、FDAが認めたのは「有害物質への曝露が減少する」という主張であり、「がんになるリスクが何%下がる」「安全な製品である」という主張ではないことだ。
FDA自身もIQOSを安全な製品とは認めていない
FDAの公式発表では、認可によって消費者がFDAから安全性を保証されたと誤解するような表示を行うことは認められていない。
また、たばこ製品に安全なものは存在せず、現在たばこ製品を使用していない人は使用を始めるべきではないという立場も明示されている。
さらに、認可対象製品については販売後の調査や使用者の行動、曝露低減表示に対する理解などを評価することが求められている。
つまり、2026年のFDA判断を「アイコスの発がん性が否定された」と解釈するのは誤りだ。
WHOの見解はどうなっているのか
WHOも加熱式たばこの健康リスクについて慎重な立場を示している。
2025年5月公表のWHO欧州地域事務局の資料では、加熱式たばこにはニコチンや有害化学物質が含まれ、紙巻きたばこより低濃度となる物質がある一方、同等または高濃度となる物質や、紙巻きたばこには通常見られない有害物質もあると説明されている。
また、2026年6月更新のWHOファクトシートでも、加熱式たばこは発がん性が懸念される有害な排出物を生じるたばこ製品として扱われている。
2025年11月には、WHOがたばこ規制とハームリダクションに関する立場を改めて公表。企業による健康リスク低減の宣伝を、そのまま公衆衛生上の利益とみなすことに警鐘を鳴らした。
FDAの曝露低減認可とWHOの慎重な見解は、必ずしも矛盾しない。前者は特定製品への化学物質曝露に関する科学的根拠を評価し、後者は長期的な健康影響や人口全体への影響を含む公衆衛生上の問題を評価しているからだ。
【肺がん・長期的な健康影響】アイコスを吸い続けるとどうなる?
アイコスを使用する人にとって、最も気になるのは肺がんの発症リスクだろう。
2026年時点では、加熱式たばこの使用によって肺がんの発症率がどの程度上昇するのか、紙巻きたばこと比べて何%低いのかを確定できるだけの長期的な疫学データはない。
アイコスと肺がんの関係
肺がんの発生には、発がん性物質への曝露、DNA損傷、細胞の変化など複数の過程が関係する。
アイコスでは、NNKやベンゾ[a]ピレンなど、肺がんリスクとの関連が懸念される物質が評価対象となっている。
厚労科研の初期リスク評価では、これらの物質による肺がんリスクが懸念される結果となった。ただし、これは化学物質の曝露やリスク評価に基づくものであり、アイコス使用者の肺がん発症率を実測した結果ではない。
また、国立がん研究センターのがん情報サービスも、加熱式たばこにはニコチンや発がん性物質が含まれることを説明している。長期的な健康影響を予測するには、研究の蓄積が必要という立場だ。
長期間使用した場合に考えられる健康影響
発がん性以外にも、加熱式たばこでは複数の健康影響が研究されている。
厚労科研の2025年度研究では、能動喫煙について循環器疾患とニコチン依存との間に強い関連性があり、証拠の確からしさもやや高いと評価された。
また、喘息などの呼吸器疾患、妊娠・周産期合併症、脂質代謝や糖代謝の異常などについても関連を示す研究が報告されている。
2026年9月7日に公開された別の厚生労働科学研究の最終報告でも、加熱式たばこの使用と喘息症状の悪化との有意な関連が報告された。
重要なのは、健康リスクをがんだけに限定しないことだ。ニコチン依存、呼吸器への影響、循環器系への影響も含めて考える必要がある。
長期的な影響が分かるまで時間がかかる理由
がんは、たばこを使用した直後に発症するとは限らない。喫煙開始からがんの発症までには20〜30年程度の期間を要する場合がある。
日本で加熱式たばこが初めて発売されたのは2013年。2026年時点では普及から約13年しか経過していない。
そのため、長期間にわたる使用者を追跡し、肺がんなどの発症率を比較する研究には時間が必要となる。
現在の研究で分かるのは、主に化学物質の発生量、体内への取り込み、短期的な健康影響などだ。数十年後のがん発症リスクについては、今後の追跡調査が欠かせない。

【受動喫煙にも注意】アイコスの蒸気は家族や周囲の人に影響する?
アイコスは紙巻きたばこのように燃焼による煙が発生しないため、周囲への影響も少ないと思われがちだ。しかし、実際には使用者が吸い込むエアロゾルだけでなく、吐き出されたエアロゾルにも有害物質が含まれる。
したがって、アイコスの受動喫煙を無害と考えることはできない。
2025年度の厚労科研で確認された受動喫煙の実態
2026年9月に公開された田淵貴大氏らの研究班による最終報告では、加熱式たばこの受動喫煙についても調査結果が示された。
過去1か月間に加熱式たばこの受動喫煙に曝露したと回答した割合は、調査対象者全体の40.0%。非喫煙者に限っても32.1%に達していた。
さらに、受動喫煙によって何らかの症状があったと回答した割合は、全体で26.9%、非喫煙者で24.3%だった。
報告された症状には、次のようなものがある。
- 気分が悪くなる
- 咳き込む
- 喉や目が痛くなる
- 頭痛がする
受動喫煙を受ける場所として多かったのは職場で、居酒屋・バー、家庭、車内、レストランなどが続いた。
なお、これらは調査で把握された曝露状況や自覚症状の割合であり、アイコスの受動喫煙によって各症状が発生したという因果関係を確定する数値ではない。
発がん性物質の受動曝露にも注意が必要
2025年度の別の厚労科研報告では、加熱式たばこの受動喫煙によって、非喫煙者の家族における曝露バイオマーカーの上昇が確認されている。
特に注目されるのは、発がん性物質NNKの副流煙中の量が紙巻きたばこより少なくても、家族の近くで使用することで、受動喫煙者の体内への取り込み量が紙巻きたばこの受動喫煙と同程度になる場合があるという点だ。
これは、加熱式たばこを使用する人が家族の近くで吸う割合が高いことなどが影響した可能性がある。
WHOも加熱式たばこの受動曝露について、周囲の人への健康影響を無視できないと指摘している。
特に子どもや妊婦、呼吸器疾患のある人がいる家庭では、屋内や車内での使用を避けることが望ましい。窓を開けたり換気扇を回したりするだけで、曝露を完全に防げるわけではない。
アイコスの受動喫煙を防ぐための判断基準
周囲の人への影響を抑えるためには、次の点を意識したい。
- 自宅の室内では使用しない。
- 車内など換気が限られる空間では使用しない。
- 子どもや妊婦の近くでは使用しない。
- 喫煙可能な場所であっても、周囲への曝露を考慮する。
- 家族に受動曝露をさせないためにも、禁煙を検討する。
アイコスは紙巻きたばこと異なる仕組みでエアロゾルを発生させるが、周囲の人の健康を守るという観点では、無害な製品として扱うべきではない。
【プロの結論】アイコスを使い続けるべきか?後悔しないための判断基準
2026年の研究結果を踏まえると、アイコスについて判断する際には、現在の喫煙状況と今後の健康リスクを分けて考える必要がある。
紙巻きたばこから切り替えようとしている人
紙巻きたばこからアイコスへ完全に切り替えた場合、一部の有害物質への曝露が減少する可能性はある。これはFDAの認可や複数の曝露バイオマーカー研究でも示されている。
ただし、切り替えによってがんの発症リスクがどの程度下がるかは確定していない。また、紙巻きたばことアイコスを併用する場合には、曝露低減の効果を十分に期待できない可能性がある。
健康面で最も望ましい選択は、紙巻きたばこだけでなく、加熱式たばこも含めて完全に禁煙することだ。
現在アイコスだけを使用している人
紙巻きたばこを吸っていないからといって、健康リスクがゼロになったわけではない。
ニコチン依存や有害物質への曝露が続いている以上、禁煙によってそれらを減らすことには意味がある。
自力でやめることが難しい場合は、禁煙外来などの医療的な支援を利用する方法もある。国立がん研究センターのがん情報サービスでも、加熱式たばこの使用者が一定の要件を満たせば保険診療で禁煙治療を受けられることが案内されている。
これからアイコスを始めようとしている人
これまでたばこを使用していない人が、健康リスクを下げる目的でアイコスを始める合理的な理由はない。
加熱式たばこにも発がん性が懸念される物質が含まれ、ニコチン依存の問題もある。紙巻きたばこを吸わない人にとっては、新たな健康リスクを抱えることになる。
研究結果を見極めるための3つの判断基準
判断基準1:有害物質の削減と発がんリスクの削減を混同しない。
化学物質の発生量が減少しても、実際のがん発症率が同じ割合で低下するとは限らない。短期的な曝露データと長期的な疫学データを区別することが必要だ。
判断基準2:研究の対象製品と資金源を確認する。
加熱式たばこには複数の製品があり、加熱温度やたばこスティック、化学組成も異なる。厚労科研の研究班は、動物・細胞実験などにおいて、たばこ産業資金による研究と独立資金による研究の結果に乖離があることも指摘している。
研究結果を読むときは、対象製品、測定条件、研究資金源を確認することが重要だ。
判断基準3:FDAの認可を安全性の保証と解釈しない。
FDAが認めたのは、特定製品についての曝露低減表示である。すべてのIQOS製品に適用されるものではなく、がんを含む疾病リスクがなくなることを保証するものでもない。
こうした違いを理解すれば、企業の広告表現やインターネット上の断片的な情報に惑わされにくくなる。
【アイコスの発がん性】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:アイコスには発がん性物質が含まれていますか?
A1:はい。NNK、NNN、ベンゾ[a]ピレンなど、発がん性が懸念される物質が加熱式たばこの分析・評価対象となっています。紙巻きたばこより少ない物質もありますが、発がん性物質がなくなるわけではありません。
Q2:アイコスは紙巻きたばこより発がん性が低いですか?
A2:多くの有害物質の曝露量は完全に切り替えることで低下する傾向があります。ただし、実際のがん発症リスクを比較できるだけの長期的な疫学データが不足しており、何%低いとは断言できません。
Q3:2025年度の厚生労働省の研究では何が分かりましたか?
A3:加熱式たばこには紙巻きたばこより少ない有害物質が多い一方、フルフラールなど一部の物質は高濃度となり、NNKやベンゾ[a]ピレンなどによる発がんリスクも懸念されました。がん発症を直接評価した疫学研究がないため、発がん性は現時点で判定できないとされています。
Q4:FDAが2026年にIQOSを認可したのは安全だからですか?
A4:違います。2026年4月17日に更新されたのは、特定のIQOS製品について有害化学物質への曝露低減を表示する認可です。FDAは安全性を保証しておらず、すべてのたばこ製品には健康リスクがあります。
Q5:アイコスだけでも肺がんになる可能性はありますか?
A5:肺がんの発症リスクを正確に数値化できる長期的な研究は不足しています。ただし、肺がんとの関連が懸念されるNNKやベンゾ[a]ピレンなどへの曝露が確認されており、リスクがないとはいえません。
Q6:アイコスの受動喫煙は家族にも影響しますか?
A6:影響する可能性があります。加熱式たばこのエアロゾルには有害物質が含まれ、非喫煙者の家族で曝露バイオマーカーの上昇も確認されています。特に子どもや妊婦の近く、室内や車内での使用は避けることが望まれます。
Q7:アイコスを吸っていれば禁煙したことになりますか?
A7:なりません。アイコスもニコチンを含むたばこ製品です。紙巻きたばこから加熱式たばこへの変更は、完全な禁煙とは異なります。健康リスクを減らすには、ニコチンを含むたばこ製品そのものをやめることが望まれます。
まとめ:アイコスの発がん性は否定できない、最も確実な選択は禁煙
2026年11月時点で、アイコスの発がん性について押さえておくべき事実は明確だ。
アイコスは紙巻きたばこのように燃焼させないため、多くの有害物質の発生量や体内への曝露量を減らせる可能性がある。しかし、NNK、NNN、ベンゾ[a]ピレンなど、発がん性が懸念される物質への曝露は残っている。
2026年5月に公表された厚生労働省の2025年度研究では、がん発症を評価する疫学研究が不足しているため、発がん性は判定できないとされた。同時に、発がんリスクの可能性を示す知見や、健康への影響が懸念される結果も報告されている。
また、FDAが2026年4月に更新した認可は、特定のIQOS製品に対する曝露低減表示の認可であり、発がん性の否定や安全性の保証ではない。
今後は、実際の使用者を長期間追跡する疫学研究や、受動喫煙を含めた健康影響の検証が必要になる。
アイコスは紙巻きたばこと異なる製品だが、無害なたばこではない。「煙が少ない」「有害物質が減っている」という情報だけで安心せず、がんや循環器疾患、ニコチン依存などのリスクを総合的に考えることが大切だ。
健康を守るという観点で最も確実な選択は、アイコスへの切り替えではなく、紙巻きたばこも加熱式たばこも使用しない生活を目指すことである。
主な参考資料・研究報告 (出典: アイコス 発がん 性(Yahoo!ニュース))
- 厚生労働科学研究成果データベース「加熱式たばこの化学的特性と健康リスクに関する科学的エビデンス構築に係る研究」(2025年度、2026年5月公開)
- 厚生労働科学研究成果データベース「加熱式タバコの能動喫煙・受動喫煙の健康影響に関する総合的検証研究」(2025年度、2026年9月公開)
- 米国食品医薬品局(FDA)「FDA Renews Authorization for Five IQOS Products to be Marketed with Exposure Modification Claims」(2026年4月17日)
- 世界保健機関(WHO)「Effects of tobacco on health」(2025年5月19日)
- 世界保健機関(WHO)「Tobacco and nicotine」(2026年6月26日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「加熱式たばこ」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「喫煙とがん」
- 発がん性物質への曝露に関するシステマティックレビュー・メタ解析(2025年)